CSR経営:継続と進化

構造改革と長期戦略
2009年度は、2008年のリーマンショックの影響で金融経済にとどまらず、生産と消費の極端な冷え込みにより、実体経済にも大きな打撃がありました。これまで売上高の6割近くを繊維や化成品など素材系事業が占めてきた帝人グループにとっても、その影響は甚大でした。生産現場を持つ多くのグループ会社では工場の稼働率が大幅に低下し、グループ全体として2010年3月期は赤字決算を余儀なくされました。
幸いにして、2009年度の第1四半期を底にして、以降は緩やかな回復基調にあります。
2009年4月には経済危機を乗り切るための「構造改革」と中・長期的な「成長戦略」からなる「経営基本方針」を発表しました。「構造改革」においては、グループ全体の固定費の削減、設備投資と在庫の削減を進めるとともに、ポリエステル繊維、PETフィルム、ポリカーボネート樹脂の3事業を課題事業と位置付け、様々な施策を推進しています。
中長期的には、技術革新を核として成長市場で持続的成長を達成します。
経営におけるCSR(社会的責任)

トライアングル経営による持続的な価値の増大
企業は経営環境が厳しい状況であればあるほど、自らの企業理念に立ちかえって将来を見据えることが大切です。帝人グループの場合、CSRの原点は、創立75周年(1993年)に制定されたグループ企業理念に明らかです。ここで私たちは「人間への深い理解と豊かな創造力でクォリティ・オブ・ライフの向上に努めます。社会とともに成長します。社員とともに成長します」と宣言しています。
経営において、私が常に意識していることは「社会とともに」、「社員とともに」社会が求める新しい価値創造を行うことです。社会的課題に正面から取り組み、それらの解決・改善に役立つよう帝人グループの技術に基づく製品とサービスの品質を顧客の視点に立って一層高めていくことが求められています。「構造改革」では、社内外のステークホルダーの理解と信頼をいただきながら、転換期にある事業の構造変革を行うとともに、一方では環境製品・高付加価値製品事業への転換や事業のグローバル化を進めています。これも企業が時代の潮流の中で常に成長しながら新しい価値を産み出すためのステップであると考えています。私たちは優良なコーポレート・ガバナンスCSRの上に事業戦略を積み重ねていくトライアングル経営を目指して、今後も社会的な使命を果たしていく所存です。
CSR活動の進捗について
帝人グループは様々なCSR活動を積極的に推進していますが、いくつか具体的な活動をご紹介しましょう。
まずは、環境に対する活動です。2007年に発表した「環境経営宣言」において、環境経営を推進するための3つの柱(環境保全・環境配慮設計・環境ビジネス)を掲げました。環境配慮設計では、チェックポイントを設定して環境に配慮した製品やサービス、生産プロセスを認定します。そして、この考え方を、顧客や社員の皆さんに広く知ってもらい、より積極的な推進につなげるために、「Earth Symphony(アース・シンフォニー)」と名付けました。
また、環境ビジネスの分野での一例をあげると、高熱伝導炭素ファイバー「ラヒーマ」を使用したハロゲン型LEDランプを、LED照明総合展示会に出展しました。現行のLED照明に劣らぬ放熱性能に加えて複雑な形状への対応や大幅な軽量化を実現できる新製品として、関係企業と協力して本格量産への検討を進めていきます。
一方、リスクマネジメントの分野においては、新しい型の感染症の大流行に備えて、2006年に基本方針・対応マニュアルを策定し、2008年には「詳細ガイドライン」制定の準備をしてきましたが、実際に新型インフルエンザが流行した昨年には、本社および事業グループのBCP(事業継続計画)を策定し対応策を実施することで、業務に支障をきたすことなく乗り切ることが出来ました。
さまざまな分野での積極的なCSR活動を推進してきたことが、帝人グループCSR報告書が環境コミュニケーションの分野で複数の優秀賞を受賞する等、社外から高く評価されたことを光栄に思います。
事業活動の今後について
これからの時代、「企業は、その事業を通じて社会的課題の解決にいかに貢献できるか」が問われて来ると思います。帝人グループでは、この1年、構造改革を進める中で様々な事業を見直し、整理・再編してきました。振り返ってみますと、その中で重点事業として残ったものはすべて、今日の重要な社会的課題に有効な解決策や改善策を提供する事業です。大きくまとめてみると、1.グリーンケミストリー(環境に優しい化学事業)、2.ヘルスケア(医療・健康事業)、3.両者の融合領域です。グリーンケミストリーでは、環境フレンドリー、安全・安心、省資源、省エネルギー、低炭素などのコンセプトがあげられます。素材事業においてはは「脱石油」の循環型ビジネスモデルの構築を推進し、このコンセプトに反するものはステークホルダーの協力のもとに生産プロセスから変えてゆきます。ヘルスケア事業が、特に高齢化する社会におけるクオリティ・オブ・ライフの向上に寄与するものであることは、言をまちません。
今後も質の高いCSR経営に一層の努力を傾けてまいりますので、皆様のご理解とご支援を心からお願い申し上げます。




