帝人グループのCSRのマテリアリティ

近年、株主・機関投資家をはじめとするさまざまなステークホルダーから、財務・非財務の情報開示に対する要請が高まっています。中でも、非財務情報のうちESG(「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」)、すなわち企業の社会的責任に関わるさまざまな課題について重要性を特定し、それらをマテリアリティ(重要課題)に掲げる理由の説明を含む、適切な情報開示が求められています。

帝人グループは、事業と社会の持続可能な発展を目指し、企業の社会的責任に関するさまざまなCSR課題について、次のように重要課題を特定し、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献していく“事業戦略と一体化したCSR経営”を推進しています。

帝人グループのCSRマテリアリティ  

CSRマテリアリティへの取り組み  

特定したマテリアリティは、課題ごとに担当組織を決め、中期経営計画策定時に課題ごとのKPIと目標値を定めています。KPIと目標値に対する取り組みについては、毎年、CSR推進部会で進捗状況を取り纏め、CSR委員会に報告し、管理しています。特に重点注力領域に定めた6つの課題については、以下のように取り組みを推進しました。

  • コーポレート・ガバナンス

確立している仕組みの有効な運用を常に重要課題としており、アドバイザリーボードやTRMコミティーなどを実施しました。

  • 環境価値ソリューション
  • 安心・安全・防災ソリューション
  • 少子高齢化・健康志向ソリューション

これら3つのソリューションについて、重点領域としての取り組みを推進していけるよう、当該製品をリストアップし、年次毎の売上高を集約しています。2017年1月に完全子会社化したContinental Structural Plastics Holdings Corporationの売上が追加されたこともあり、2017年度は、前年度より975億円増加し、4,270億円となりましたこれら3つのソリューションについて、重点領域としての取り組みを推進していけるよう、当該製品をリストアップし、年次毎の売上高を集約しています。2017年度は、2017年1月に完全子会社化したContinental Structural Plastics Holdings Corporationの売上が追加されたこともあり、2017年度は、前年度より975億円増加し、4,270億円となりました。

  • 環境負荷低減

国内外で生産における温室効果ガス排出量の削減に努めています。2017年度は、東邦テナックス(株)三島事業所(現 帝人(株)三島事業所)における燃料転換による効果発現に加え、徳山事業所の操業停止や岐阜事業所での生産停止などの影響によりCO2排出量が減少しました。パリ協定を踏まえた2020年以降の目標については、2019年度設定に向けて検討に着手しました。

  • ダイバーシティ

ダイバーシティ意識啓発および働き方の多様化、女性活躍、人財の多様化に継続して取り組みました。また2017年度は、性的指向・性自認・性表現などの多様なあり方を受容する環境づくりの一環として、採用担当者向けの研修も行いました。このほか、2020年度末に国内グループ主要4社の女性管理職を180人にするという新たな目標も設定しました。

※国内グループ主要4社:帝人(株)(旧東邦テナックス(株)を含む)、帝人ファーマ(株)、帝人フロンティア(株)インフォコム(株)(国内グループ企業社員数の70%をカバー)

マテリアリティ特定プロセス

帝人グループは、CSR課題を幅広く把握・整理し、ステークホルダーへの影響度と帝人グループにおける重要度の観点からマテリアリティの分析・抽出を行い、CSR管掌が外部有識者と対話した上で、最終的には経営会議で帝人グループのCSR課題に関するマテリアリティを特定しています。

  • STEP1 課題把握・整理

    CSR課題を幅広く把握し、マテリアリティ分析の対象とする課題群の整理を行っています。

    帝人グループがすでに取り組んでいる課題、および経営戦略でビジネス機会として捉えている価値創造(CSV)課題を基本として、ISO26000、GRIガイドライン、国連グローバル・コンパクト、国連SDGs、パリ協定などが示す社会課題や主要SRIの評価項目とも照合し、CSR課題を把握・整理しています。

  • STEP2 マテリアリティ分析

    課題把握で整理したCSR課題群のマテリアリティ分析を行っています。

    CSR課題群の帝人グループにおける重要度とステークホルダーへの影響度を分析し、それぞれを軸とする2軸平面にマッピングしています。

    ステークホルダーへの影響度(縦軸)の判定方法

    ステークホルダーを、「株主・投資家」「社員」「顧客」「サプライヤー」「地域住民」に分類し、CSR課題ごとに、各層のステークホルダーの立場からみて相当に関心があると推定されるか、それほど関心がないと推定されるかを判定し、ステークホルダーへの影響度を決定しています。

    帝人グループにおける 重要度(横軸)の判定方法

    事業への影響度(ポジティブ側面・ネガティブ側面の双方を考慮)と、発生の見込み・確率の両面から、帝人グループにおける重要度を決定しています。

    STEP3 重要課題抽出

    STEP2で分析した課題群から、帝人グループにおける重要度とステークホルダーへの影響度がともに高い課題(図中の赤線で囲んだ部分)を重要課題として抽出しています。
  • STEP4 外部有識者とのダイアログ

    帝人グループのCSR課題に関するマテリアリティの特定プロセスと抽出課題について、外部有識者と対話を実施しています。

    有識者からのご指摘(2018年5月)

    2017年度は、ダイバーシティを中期経営戦略の重点領域と位置付ける帝人グループにとって、多様な人財が能力を発揮し、イノベーションを創出できる組織となるにはどうあるべきか、3名の外部有識者の方を招いて「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」をテーマにダイアログを開催し、ご提言をいただきました

    ダイバーシティは企業にイノベーションを起こす手段

    ダイバーシティを推進する上で最も大切なのは「ダイバーシティを何のために推進するのか」ということです。ともすると、ダイバーシティそのものが目的になってしまうことがあります。ダイバーシティが会社を良くする手段、すなわちイノベーションにつながることが重要です。
    中期経営計画を拝見すると、帝人では経営基盤の強化の中にダイバーシティが大きな位置付けとされていますから、その枠組みは良いと思います。ただ、課題もありますね。少し厳しい言い方になりますが、以前の経営計画に謳われていた「グローバルエクセレントを目指す」ためにダイバーシティを推進する、というのは、どこか他人事に聞こえます。これでは現場に考えが落ちない。イノベーションとは多様な人、知見から生まれるものだから、ダイバーシティが必要、ということに、現場で働く人たちが納得する、つまり「腹落ち感」がないと伝わらないんです。 トップの明確なビジョンがあってこそ、社員の「腹落ち感」は生まれます。大きな方向性をトップが示し、役員、管理職が現場に落としていく。ダイバーシティの議論だけではなく、組織全体の議論が必要だと思います。
    帝人では、複雑な事業構造を持っていることで結果的に多様性を有しており、それがゆえに各事業の考え方の異なる社員を結びつけるのに苦労しているとうかがいました。また、海外企業のM&Aを進めた結果、国内とのシナジー、良好なコミュニケーションを取ることが課題だとも聞いています。ここでヒントになるのは、欧州企業の事例です。ある企業では、常に100年先の未来を指向し、これをグループ全体にビジョンとして徹底して浸透させているのです。ここでもポイントは現場の「腹落ち感」です。超長期的な展望を持って何に視点を合わせるかを考えた時、その先には事業成長とともに社会的課題があるのです。こうしたビジョンを全社で共有し、異なる考え方の人たちをまとめ上げていくことで、イノベーションを起こすことができるのだと思います。


    早稲田大学ビジネススクール准教授
    入山 章栄

    ダイバーシティは属性ではなく、頭の中の多様性

    私は、イノベーションを生む組織開発、いわゆるサクセッションプランを専門に企業サポートに携わり、その中でダイバーシティ&インクルージョン(D&I)のサポートにも携わっています。帝人は100年の歴史の中で非連続の成長を遂げ、ダイバーシティにも早くから取り組んでいらっしゃる。しかし、率直に言って、そのチャンスをまだまだ活かし切れていないように思います。入山さんもおっしゃったように何のためのD&Iなのか。今、女性が注目されているため象徴的に扱われていますが、企業成長にとって女性活躍は一本目の矢、最小成長のレシピなんです。ダイバーシティは属性ではなく、頭の中の多様性です。
    ダイバーシティを本当に活用するためには、経営陣が社員に対するスポンサーシップを持って、早めに人財を選抜していくことも一つの方法です。選抜の際、人財に甲乙つけがたい場合には女性や外国人を選ぶ。大事なのはポテンシャルを見抜くことです。選抜された人たちの生産性、イノベーションに注目することです。帝人で言えば、マテリアルとヘルスケア事業の双方から人財を出し、パイプラインが揃ってくるとその境界が埋まり、交流も楽になると思うんです。事業ごとの人事交流で、その境界を若いうちに越えてしまうことで、今やっていることを加速させることが大切です。この選抜を誰が意思を持ってやるか。当然、批判も出てきますので、ここには「神の手」が必要だと思います。つまりは、経営陣ですね。
    さらに言えば、人事異動に伴って評価を下げてしまうというマインドセットを変える必要があります。逆に加点にすること、これが担保されないと本当にいい人は選抜されません。オープンイノベーションの考え方ですが、このサクセッションプランを導入したベンチャー企業はみんな伸びていますし、こうしたベンチャーの手法を取り入れている大手企業も増えています。


    (株)プロノバ代表取締役社長
    岡島 悦子

    「クリエイティブな摩擦」こそがイノベーションを引き起こす

    帝人はD&Iのさまざまな取り組みを行っていらっしゃいますが、もしかして摩擦が足りないのではないでしょうか。諸条件は揃っているのに、摩擦が足りない。摩擦とは、いろいろな多様性がぶつかることで生まれる可能性です。これを起こすことでクリエイティビティが生まれ、そしてイノベーションにつながるのです。ワークライフバランスをいくら整備してもイノベーションにつながる環境にはなりません。M&Aでも摩擦は起きますが、これがクリエイティビティにつながっているのかが、現状の帝人では見えないのです。マテリアルとヘルスケア事業、あるいは本社とM&Aによる子会社、これらでうまく摩擦が生じ、クリエイティブに結びついていくことが必要だと思います。
    ワークライフバランスの整備と同時に機会平等という根本的な制度が必要です。年功序列ではなく開けた人事制度になっているか。経営陣が社員にアプローチする際に、年齢に関係なく平等にできているのかなど。若い人を引き上げ、バランスを変えてみることでクリエイティブな摩擦を生むのだと思います。幸い、帝人には将来的に明るいビジネス、成長分野で大きなポテンシャルがありますね。ここに何が必要かと言えば、若い人、です。化学、デジタル分野で社会インフラとビジネスモデルが融合する機会が数多くあり、帝人の底力を見せる時が来ていますが、この化学反応を起こせるのは若い力なんです。もちろん女性も。ダイバーシティを広く捉えて、女性も若い人もミックスすることでイノベーションにつながります。このような、旧来の考え方の軸を動かすことで摩擦は生まれるのです。


    OECD 東京センター所長
    村上 由美子
  • STEP5 マテリアリティの特定

    経営会議において審議・確認し、「帝人グループのCSR課題に関するマテリアリティ」を特定しています。
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