Section2: Sustainability Platform

チーフHRオフィサー インタビュー

将来ニーズを見据えた人財開発と多様性の推進:戦略的人事で事業のパートナーとなる

2019年4月、帝人グループの100年の歴史の中で初めて、外国籍の社員がチーフHRオフィサーに就任しました。
そこで本インタビューでは、帝人グループにおける人財のグローバル化と多様化ついて、ご自身の人事における経験や哲学を踏まえながら語ってもらいました。

カローラ・ヤプケ
帝人グループ執行役員 人事・総務管掌
1992年 ヘキスト(独)入社
2001年4月 帝人モノフィラメント(独)入社
2009年4月 帝人クリエイティブスタッフ・グローバル人事室長
2012年4月 帝人アラミド・HR Manager
2014年4月 帝人グループ理事人事・総務本部長補佐(グローバル人事担当)
2019年4月 帝人グループ執行役員人事・総務管掌就任

私のキャリアと新たな任務

私はずっと人事畑を歩いてきました。帝人でのキャリアは、2001年にドイツで、帝人モノフィラメントのHRマネジャーとして始まりました。2009年にはグローバル人事室長として来日する機会に恵まれました。大阪時代の主な業績は、グループ全体を対象としたリーダーシップ研修プログラム「EaGLES」の実現です。大阪で3年間過ごした後、ヨーロッパに戻り、オランダの帝人アラミド本社およびインターナショナルの販売およびマーケティング人事を担当し、部門の再編成に取り組みました。

2014年には帝人グループ理事、副チーフHRオフィサー(グローバル人事担当)に任命され、グローバル人財マネジメントシステムを構築しました。日本の帝人には非常に優れた人財開発システムがあり、日本国内では適材適所の人財配置が行われていますが、海外については、誰が優れた人財で、どこにその人がいるのかが把握されておらず、また、グローバルベースでどのように人財育成を行うかが確立していません。そのため、海外の人財を日本国内で「見える化」することが私の仕事でした。このプロジェクトの主眼はマテリアル事業グループでしたが、それは、帝人で最もグローバルな事業がマテリアル事業であるためです。

今回、日本人ではない私をチーフHRオフィサー(帝人グループ執行役員 人事・総務管掌)に任命したことは、帝人にとって極めて大きなステップであることは承知しています。会社における人事というものは、考えられるかぎり、最もローカル色の強い部分ですから。心から感謝していますし、私にとっても、大変大きなサプライズでした。でも、これは第一歩に過ぎません。鈴木CEOは、とても意欲的な目標を持っていますので、その達成に向けてCEOをサポートすべく、全力を尽くす所存です。とはいえ、私一人の力で全てを行うことはできません。幸いにも、私のそばには、同じビジョンを共有し、私の取り組みを支えてくれる同僚や部下がいます。

多様性を含む戦略的人事

「多様性とは女性の登用以上のもの。事業に付加価値を与えるものでなければならない」

私の新たな任務において、最も重要なのは戦略的人事を推進することです。鈴木CEOからは、挑戦しがいのある目標を与えられています。私が目指すのは、会社の進化に適した人財を供給し、未来の事業をサポートすることです。具体的には、優れた人財を早期に見極め、将来ニーズに合うよう育成し、また、帝人の多様性を向上させることです。私が考える多様性とは、女性の登用以上のものです。トロフィーのように飾って、「わが社は、こんなに多様性に富んでいる!」と自画自賛するためのものでもありません。ビジネスの観点から考える必要があり、多様性は事業に付加価値を与えるものでなくてはなりません。また、私たちはグローバルに多様化を実現することが求められていますので、そのKPIを設定したいと考えています。

女性登用の面では、経営幹部・役員クラス登用に重点を置く方針です。それが帝人にとって最大のチャレンジであるからです。これまで帝人は、グループリーダーや課長レベルの管理職としての女性登用では実績を収めてきましたが、経営幹部・役員クラスのポジションへの登用となると、まだまだ多くの課題があります。

私の人事ビジョン

「人事は事業部門のパートナーであり、企業理念と行動規範の推進者兼番人」

事業をサポートすることが、人事の目的だと思います。人事は事業部門のニーズを明確に把握し、今後起こりうる問題を予測し、事業部門がその問題を認識すらしていないうちから、ソリューションを提供する必要があります。社会とビジネス環境が目まぐるしく変化する今、人事はそうした変化の先をいかなければなりません。

そのためには、ビジネス現場の言葉を語り、ビジネスのそばにいなければなりません。ただ現時点では、この役目を担うことができる人事人財が少ないのが現状です。そのため、人事スタッフのエンパワーメントも必要です。

さらに、私たちは帝人全体の企業理念と行動規範の推進者になる必要があります。人事の人間として、帝人の企業理念と行動規範の番人になり、この理念が単なるきれいな本ではなく、会社のDNAの一部としなければなりません。

帝人の伸びしろ

「一体化した文化(One Teijin)を築く」

組織としての帝人には、いくつか改善余地があるのではないでしょうか。私の目から見て、まず改善すべきことは、私たちは炭素繊維担当、アラミド担当、樹脂担当といった「サイロ思考」から脱却することです。真に「一体化した文化(One Teijin)」が必要ですが、今はまだそれができていないと思います。

過去を振り返ると、帝人は自前のみで成長してきた企業ではないので、コーポレート・アイデンティティがひとつになっていないことは、さほど驚くことではありません。もちろん帝人にも、100年前に、ここ日本で誕生した起源の部分はあります。しかし、今や全体の50%超を占める海外の拠点や事業は、帝人が過去のある時点で買収したり、アジア諸国において設立したものです。買収した企業はさまざまな背景を持ち、また前オーナーから受け継がれた文化を背負っています。とはいえ、過去の私たちに不足していたのは「企業文化の統合プロセス」です。ひとつの企業文化がなければ、社員の帰属意識がなかなか高まりません。また、キャリアアップの機会が少ないと考えて、求職者が大企業よりむしろ中小企業を選好する可能性も考えると、帝人の雇用者としての魅力度にも影響します。

私の人事哲学

「誰もが評価され、尊重されていると感じる文化、そしてコミュニケーションとコーチングという新たなリーダーシップスタイル」

カローラ・ヤプケ

どの拠点かを問わず、誰もが評価され、尊重されていると感じる文化を構築したいと考えています。尊重することや、褒めることはコストがさほどかからないにもかかわらず、社員のパフォーマンスと定着に大きく影響します。コミュニケーションは、お互いを尊重する職場環境づくりのカギを握っています。社員が期待しているのは、恒常的かつ肯定的なフィードバックです。ところが、私を含め、上司全員、それを忘れてしまうことがとても多いのです。

新たなリーダーシップスタイルの構築も必要だと考えています。私たちの世代は、リーダーになるとは、自分の専門分野において専門家となり、かつ、部下を指揮することだとする世の中で育ちました。しかし、今はもはやそうした時代ではありません。今日求められているのは、「部下がベストを尽くせるよう、コーチングすること」です。もちろん、方向性を決めてあげなければならない場合もあります。でも、目の前にいる相手は大人であり、自分の私生活をきちんと管理しているのです。それならば、彼らが帝人での職業生活を管理できないと考える必要はあるでしょうか。自らのキャリアに対してもっと責任を持たせてあげるべきです。そして、これにもやはり、多くのコミュニケーションとフィードバックが必要になります。

とりわけミレニアル世代は、自由に自分の課題を解決することを望む反面、自身のソリューションに到達するための指導やアドバイスを求めます。彼らのコーチングをし、明確な期待目標を設定してあげることが、私たちの役目です。

同様に若い世代にとって重要なのは、社会への積極的な貢献です。彼らは、例えば気候変動など、今の時代の大きな課題に対してソリューションを提供する企業で働くことを望んでいます。だからこそ、帝人の企業理念と長期ビジョンはとても魅力的に映るのです。私たちに求められているのは、帝人の理念やビジョンの実現を今まで以上に推進することです。