2013年4月24日

放射線を遮蔽するアラミド製品の開発について

帝人株式会社(本社:大阪市中央区、社長:大八木 成男)は、このほど、放射線(X線およびγ線)を遮蔽するアラミド繊維織物およびアラミドペーパーを開発しました。5月上旬よりサンプル提供を開始し、放射線量の高い場所で使用される防護衣料やシート材などの用途を中心に市場開拓を進めていきます。

これらの製品は、帝人グループが製造・販売するパラ系  アラミド繊維「テクノーラ」および「トワロン」に、優れた放射線遮蔽性を有するタングステン*1の粒子をブレンドしたものです。一般に高比重の金属を繊維に配合して製糸するのは困難とされていますが、帝人は、「テクノーラ」および「トワロン」の紡糸法や素材特有の物性を活かすことにより、これを実現しました。

*1タングステン:レアメタルの一種。金属の中で最も融点が高く(3,380℃)、高比重で、重量は鉄の2.5倍。照明やОA機器に広く使われているほか、鉛に匹敵する優れた放射線遮蔽性があることから、最近では放射線遮蔽材としても使用されている。

タングステンを配合した「テクノーラ」織物(左)と「トワロン」ペーパー(右)

1.背景

(1) 帝人グループは、高強力のパラ系アラミド繊維「トワロン」および「テクノーラ」と、長期耐熱性や難燃性に優れるメタ系アラミド繊維「コーネックス」を併せ持ち、警察、消防、製造現場などの安全を支える「ライフプロテクション」分野において幅広いソリューションを提供しています。こうした中で帝人は、東日本大震災以降、復興作業に携わる作業員の安全を支えるソリューションとして、アラミド繊維をベースとした放射線遮蔽素材の開発に取り組んできました。
(2) 放射線を遮蔽するためには、一般的に比較的安価で遮蔽能力に優れる鉛、および鉛を含む材料が使用されていますが、地球環境に対する影響懸念から、鉛の使用については世界的に規制の動きがあります。こうした中、最近では、人体や環境への影響が比較的低いタングステンが、鉛の代替として放射線遮蔽用途に使用されています。
(3) タングステンを用いた放射線遮蔽素材としては、繊維状やシート状の加工製品のほか、樹脂やゴムにタングステンを配合したハイブリッド素材などがあります。しかし、一般的に、タングステンのような高比重の金属を繊維に配合して製糸するのは難しいため、タングステンを含む繊維素材は実現が困難とされており、さらに、繊維に高比重の金属を高濃度で配合すると、強度や弾性率などの繊維固有の機械的特性が損なわれることもあることから実用されていません。


2.開発製品の特長

(1) 帝人は、以下の手法により、自社の2種類のパラ系アラミド繊維にタングステンの粒子を配合することを可能にしました。
・「テクノーラ」については、独自の紡糸技術により、繊維中にタングステンを練り込みました。帝人がこれまで培ってきたポリマー技術と紡糸技術を駆使することで、繊維内にタングステンを均一に配合することができます。
・「トワロン」については、元来フィブリル化(繊維内部の小繊維が摩擦作用で表面に現れ毛羽立つこと)しやすいことから、パルプ形状での使用が可能です。パルプ形状の「トワロン」は、異形状の素材を保持する力に優れており、この特性を活かすことで、タングステン粒子との高い接着性を実現しました。さらに、シート化技術を組み合わせることで、タングステンを均一に分散させたペーパーを生成することもできます。
(2) こうしたことにより、放射線遮蔽性を実現した「テクノーラ」織物および「トワロン」ペーパーを開発しました。これらにはいずれも以下の特長があります。
・アラミド繊維固有の優れた原糸強度により、タングステンのような高比重の金属を高濃度で含有しながら、ポリエステルなどの汎用繊維を上回る強度を発揮します。
・配合するタングステンの量に応じた放射線遮蔽率を実現します。
・織物およびペーパーであることから、柔軟性や加工性に優れ、鉛板やコンクリートでは実現できなかったフレキシブルな形状での利用が可能です。
(3) また、一般にタングステンを配合することで素材元来の難燃性や耐切創性が向上するとされており、タングステンを配合した「テクノーラ」織物は、「テクノーラ」が元来有する耐切創性や難燃性を上回る性能を発揮します。その特徴を活かし、鋭利な瓦礫や刃物を扱う作業や、高温体を扱う作業に使用する資材や防護服などへの用途展開が期待できます。
(4) 「トワロン」ペーパーは、最大90wt%(重量パーセント)*2という高濃度のタングステンを保持できるため、薄くても高い遮蔽性能を有しています。積層や成型も容易であることから、耐熱ガスケットをはじめ、耐熱シート材や補強材など、耐熱性が要求される幅広い分野での使用が期待されます。

*2重量パーセント:ある物質100グラム中に含まれている特定の物質のグラム数。90wt%とは、100グラムの「トワロン」ペーパー中に、90グラムのタングステンを含有している状態を示す。


3.展開計画

帝人はこれらの開発製品について、5月上旬よりサンプル提供を開始し、医療や震災復興、放射線実験などの分野に向けて、放射線量の高い場所で使用される防護衣料やシート材を中心とした用途への展開を目指します。


【参考】帝人のアラミド繊維について
アラミド繊維は、一般的に高強力、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性などの特性を持つ高機能繊維の1つで、パラ系とメタ系の2種類に大別される。帝人グループは、この異なる2種類のアラミド繊維を事業化している世界屈指のメーカー。パラ系アラミド繊維は、特に強度、防弾・防刃性などに優れ、主として防護衣料、自動車のブレーキパッドなどの摩擦材やタイヤの補強材、光ファイバーケーブルの補強材などに使われており、年率7~9%の市場成長が見込まれている。帝人グループは、オランダ・エメン市で生産する「トワロン」と、愛媛県松山市で生産する「テクノーラ」で世界市場の約2分の1を占める。帝人が山口県岩国市で生産するメタ系アラミド繊維「コーネックス」は、長期耐熱性や難燃性に優れ、耐熱フィルターやゴムベルト・ホースの補強材などの産業資材、および消防服などのユニフォームに使われている。

当件に関するお問い合わせ先
・報道関係のお問い合わせ
帝人株式会社 コーポレートコミュニケーション部 (東京)03-3506-4055 (大阪)06-6268-2763
・その他のお問い合わせ
帝人株式会社  高機能繊維営業部門  セーフティーソリューション課 03-3506-4823

 

掲載されている情報は、発表日現在のものです。
その後、内容が変更になっている場合がありますので、あらかじめご了承下さい。