SOLUTION

世界を支えるソリューション 04 少子高齢化・健康志向ソリューション

人生100年時代の健康をつくる。
世界を巡ってたどり着いた、
「バーリーマックス®」。

SUMMARY

アフリカ先住民の食生活をヒントに、オーストラリアで生まれたスーパー大麦「バーリーマックス®」。世界を巡ることでたどり着いたこのソリューションを、社内外の力を結集して、日本市場へ。

DETAIL 01

着る繊維から、
食べる繊維へ。

 2014年、私はシリコンバレーにいました。目的は、マテリアルでもヘルスケアでもない、テイジンの次なる事業テーマを探索すること。世界でもっとも進んだテクノロジーが生まれる場所なら、有望なテーマが見つかるはずだと考えたのです。現地で驚かされたのは、食を手がけるユニコーン企業が次々と登場していたことでした。シリコンバレーと食。そのギャップも面白かったですし、これから食の世界で大きな変化が起こるのではないかという予感がありました。

 また、世界中で腸についての研究が進んでいたこともヒントになりました。ヒトゲノム計画が2003年に完了した後、優秀な研究員たちが移った次のフィールドが腸だったのです。人体のブラックボックスである腸について解き明かすために、ヒトゲノム編集の技術を応用した腸内細菌の分析が行われていました。こうした動きを知るうちに、「人の健康を大きく左右する腸を、食という切り口から考える」というコンセプトにたどり着いたのです。

 とはいえ、いきなり腸内細菌をプロジェクト化するのはハードルが高すぎました。かわりに着目したのが、菌のエサである食物繊維です。有用な食物繊維を与え、菌が出す代謝物をコントロールし、健康増進に繋げていく。このテーマを、「着る繊維から食べる繊維へ」というキャッチフレーズを添えてCEOに提案。ちょっと笑われましたが、無事に予算がつきました。

DETAIL 02

オーストラリアでの出会い。

 事業の中身を決定づけたのは、オーストラリアである研究者と出会ったことでした。かつてオーストラリアでは、生活習慣病の急増が引き金となって医療財政が破綻しかけたことがありました。その問題を食生活の改善によって解決するため、CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)は世界各地で調査を実施。その陣頭に立ったデビッド・トッピング教授とコンタクトを取ることができたのです。

 トッピング教授は、アフリカの先住民が結腸ガンや直腸ガンになりにくいことに注目。彼らの食生活を調べた結果、穀物から多くの難消化性でんぷんを摂っていることを突き止めました。その結果をもとに開発されたスーパーフードが、スーパー大麦「バーリーマックス®」です。一般的な大麦に比べて、2倍の総食物繊維量と、4倍の難消化性でんぷんを含みます。この「バーリーマックス®」に惚れ込んだ私たちは、トッピング教授を通じて権利を持つ現地企業The Healthy Grain Pty Ltdと交渉し、日本における独占共同開発契約を締結することになりました。

 日本市場への導入にあたっては、食品業界での実績を持つコンサルタントなど、テイジンの外部から多くの人を招き入れました。私は研究員の出身なので「技術さえよければ売れる」とつい考えてしまいがちなのですが、業界の作法に通じたプロの力をきちんと借り、マーケットに合わせた売り方をしていくことが大切だと考えたのです。「バーリーマックス®」は出足こそ静かでしたが、テレビで紹介されたことをきっかけに認知が向上。現在は自社開発商品のほか、有名コンビニチェーンの商品などに使用されています。

DETAIL 03

テイジンの総力で、
人生100年時代の健康をつくる。

 これまでにない新事業を目指してスタートした「バーリーマックス®」ですが、そこにはテイジンが培ってきたさまざまなノウハウが注ぎ込まれています。「バーリーマックス®」の機能をプレゼンするためのエビデンスは、ヘルスケア事業が持つ臨床試験のノウハウによって得られたもの。また、マテリアル事業のポリマー解析技術は、「バーリーマックス®」の機能成分、及び構造を明らかにする上で大いに役立ちました。実は食こそが、テイジンのコア技術を最高の形で融合できる分野なのではないかと思うほどです。

 健康寿命を伸ばすことが社会課題となったこの時代に、健康維持の基本である「食」にできることは、まだまだあるはずだと思います。私たちは科学的根拠のある機能性食品素材にこだわり、「バーリーマックス®」を始め、水溶性植物繊維「イヌリア®」、ビフィズス菌「BB-12™」など、さまざまな製品を送り出してきました。これらの製品が、1粒、また1グラムでも多くたくさんの人々に届き、健康増進につながってほしい。そんな想いを原動力に、事業活動を続けていきます。