サステナビリティ

リスクマネジメント

「経営戦略リスク」と「業務運営リスク」を対象とするTRM(トータル・リスクマネジメント)体制を構築し、リスクを統合管理しています。

TRM(トータル・リスクマネジメント)

帝人グループは、企業の持続的成長にかかわるあらゆるリスクに対処するために、「経営戦略リスク」と「業務運営リスク」を対象とするTRM体制を構築し、リスクの統合管理を行っています。2003年度からCEOを委員長とする「TRMコミティー」を取締役会のもとに設置しており、取締役会は、TRMコミティーから提案されるTRM基本方針、TRM年次計画等の審議・決定を行うとともに、重要なリスクを管理し、事業継続のための体制を整備します。また、監査役は、取締役会がTRMに関する適切な方針決定、監視・監督を行っているか否かについて監査します。

「経営戦略リスク」の評価についてはCEOが直接担当し、取締役会等における重要な経営判断材料として提供します。「業務運営リスク」についてはCSR管掌が担当しており、海外を含むグループ全体の業務運営リスクの管理を行っています。各事業グループ、グループ会社等が行う個別のリスク管理を全社横断的に把握・確認し、統一的な対応指針を策定するなど、グループ全体のリスク管理体制を強化しています。また、マクロ環境動向については、帝人グループへの影響としてのリスクと機会の両面について、マテリアリティと関連づけて捉えています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するリスクと対応

COVID-19が帝人グループの事業に与える影響をモニタリングし、経営環境の悪化を想定した対応策の準備を継続しています。2020年度はCOVID-19により世界経済が減速し、自動車・航空機向け用途を重点市場とするマテリアル事業領域の業績が大きく影響を受けました。特に炭素繊維における航空機向け需要の低迷が継続し、収益性低下影響が長期化する可能性があります。この対策として、生産稼働率の向上や販売構成の改善による収益性改善策、中長期的な需要回復を見据えた航空機向け炭素繊維中間材料の新規大型プログラム獲得に向けた開発を進めるとともに、収益性のモニタリングを行っています。

COVID-19拡大に伴う業務運営上のリスクに対処するため、2020年1月にCSR管掌を本部長とする「新型コロナウイルス感染症緊急対策本部」を立ち上げ、グローバルに感染が拡大した4月から6月の間はCEOを本部長とする体制としました。2021年4月からは「新型コロナウイルス対策本部」として、従業員とその家族の安全確保と事業継続のための、グローバルな視点での方針決定と施策推進を行っています。

各拠点は、帝人グループグローバル方針に定められた感染予防と健康確保、通勤と勤務、業務出張、会合とイベント、人権への配慮の各項目について、各国各地域の法令等に基づき、運用ガイドラインを制定しています。こうした中で、2020年度は、ヘルスケア等のエッセンシャルビジネスの継続に加え、医療機関での需要が急拡大した医療用ガウンを迅速かつ大量にお届けするなど、帝人グループの製品・サービス・ノウハウ、グローバルネットワークを最大限に活用した取り組みも行いました。

新型コロナウイルス関連の取り組みとお知らせ

認識しているリスク

帝人グループがTRMコミティーで重大リスクとして管理している経営戦略リスクおよび業務運営リスクの内容は以下の通りです。

経営戦略リスク リスク発現時の主な影響 対応策
マクロ環境リスク
  • 各国・地域の景気動向や経済状況、主要な供給先である自動車・航空機市場の動向による販売量の変動
  • 原燃料価格変動によるコスト変動
  • 外貨建て取引の財務諸表への反映および海外連結子会社の財務諸表の円換算等で必要となる為替レートの変動(対米ドル1円の円高の場合、営業利益で約3億円/年の減益影響)
  • 金利の変動による支払利息の変動
例えばCOVID-19による自動車や航空機市場における影響など、業績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性のあるものを中心に抽出し、アセスメントを実施しています。
原燃料価格は適正在庫水準の確保や長期契約による価格安定化、為替レートは為替予約取引等の活用や海外投資に対する現地通貨建てでの資金調達、金利については負債の長期・金利固定化を通じ、リスク低減を図っています。
制度変化リスク
  • 温室効果ガス排出規制、プラスチック製品規制等の想定以上の強化
  • 米中貿易摩擦の再燃等をはじめとする、世界的な保護主義の台頭や経済安全保障リスクの高まり
  • 国内における薬価改定等の医療費抑制政策の加速
各国・地域における環境規制や保護主義の台頭などの制度変化リスクや、それらの影響も含めた市場・競合環境の変動リスクに対しては、影響する個別事業において事前にコンティンジェンシープランを作成するとともに、予兆も含めモニタリングを継続し、戦略の変更等早めの対応ができるよう準備しています。
また、経済安全保障に関しては関連する情報取得を進め、危機の早期把握に努めています。
市場・競合環境変動リスク
  • 競合環境の変化による需給構造の変動
  • 素材・中間材料・部品供給ビジネスにおける、末端の需要動向がもたらすサプライチェーン各段階での実体経済以上の在庫調整
資源投入リスク
  • 戦略に適合する案件が探索できず、設備投資・M&Aの実施が不可となる。もしくは遅延
  • 研究開発費の投入に対し、研究開発の成果が目標から大きく乖離
事業創出・拡大のための大型戦略投資案件については、事業環境を考慮した見極めや個別課題へのアクションプランを重点的にフォローしています。
財務健全性リスク
  • 経営環境の著しい悪化等で生じる収益性の低下等による、保有する固定資産についての減損損失の発生
  • 将来の課税所得の予測・仮定が変更されることで繰延税金資産の一部または全部が回収できないと判断された場合の繰延税金資産の減額
定期的に「ネット有利子負債/EBITDA」「自己資本比率」「D/Eレシオ」等をモニタリングするとともに、減損懸念資産や繰延税金資産の継続的なモニタリングを通じて自己資本毀損リスク規模を把握しています。資金調達に際しては、短中期的な大規模資金需要や自己資本毀損リスクも踏まえ、財務健全性に配慮した最適資金調達を検討します。また、運転資本管理、政策保有株式縮減等による資産圧縮を徹底しています。
業務運営リスク リスク発現時の主な影響 対応策
自然災害等リスク COVID-19への対応のほか、事業継続計画の随時見直しや各種防災訓練を通じて、災害発生時の被害の最小化や速やかな復旧を目指しています。
製造リスク
  • 有害化学物質や産業廃棄物の不適切な取り扱いによる
  • グローバルな環境への影響
  • 化学プラントの大事故I
KPIを設定し、有害化学物質および埋立廃棄物の管理・削減に取り組んでいます。また、防災に関する各種ガイドラインに基づいた防災診断や教育・訓練の実施など、さまざまな施策に取り組んでいます。
製品・品質リスク
  • 製品・サービスの欠陥、重大な品質問題
  • 賠償責任を伴う品質問題
帝人(株)、帝人ファーマ(株)等の主要子会社に、他の部門から独立した専任の品質・信頼性保証部署を設置し、厳格な品質管理基準に基づき、事業活動全般における品質保証を確保する体制を敷いています。
法令・倫理リスク
  • 事業を展開する国や地域において商取引、競争法、反贈収賄、個人情報保護、知的財産、製造物責任、環境、労務、税務、安全保障、適用される業法規制等に係る各種法令・規制に違反した場合に、監督当局による行政処分、訴訟対応、事業活動の停止、企業ブランド価値の棄損、ないし、社会的信用の失墜
  • 規制等を遵守するための費用増加
  • サプライチェーン上または社内での人権侵害の発生による事業運営への支障や社会的な信頼の棄損
M&A等により社員の多様性が高まる中、企業理念や行動規範をグローバルに浸透させる活動に取り組むほか、社内関係者だけでなく取引先に対しても法令遵守はもとより社会的な規範の遵守を求めています。サプライチェーンまたは社内における潜在的な人権侵害リスクに対して、人権デューディリジェンスやCSR調達などの取り組みを強化しています。
情報セキュリティリスク
  • 災害、サイバー攻撃、不正アクセス等による情報の外部流出や第三者による不正利用
研究開発・製造・販売などに関する重要情報、ヘルスケア事業における個人情報等を取り扱うにあたり、ハード面・ソフト面で情報セキュリティ対策を実施しています。

業務運営リスクマネジメントのグループ推進体制

以下の体制のもと、海外を含むグループ全体の業務運営リスクの管理を行っています。CSR管掌および帝人(株)CSR・信頼性保証部が、各事業グループ(本部)、グループ会社等が行う個別のリスク管理を全社横断的に把握・確認し、統一的な対応指針を策定するなど、グループ全体のリスク管理体制を強化しています。

業務運営リスクマネジメント活動

2020年度はリスク管理プロセスの強化に注力し、2019年度に運用方針を見直した「CSR管掌レビュー」の実効性向上とリスクマネジメントツールの試行運用を開始しました。
リスク管理プロセスの中でも重要なチェック機能であるCSR管掌レビューでの指摘事項をTRMコミティーに報告・審議し、必要な対応を次年度の計画に組み込むことで、リスクへのより効果的な対策が取れるようになりました。
また、新しくリスクマネジメントツールを導入したことで、第一のディフェンスラインである事業本部などがリスクアセスメントを実施する際の利便性が向上し、TRMコミティーから取締役会への効率的な報告が可能となりました。

事業運営リスク対応、事業継続計画(BCP)の状況

自然災害への対応

2020年6月下旬~7月上旬にかけて頻発した豪雨や台風10号の影響などにより、国内の一部の事業所が操業を一時中断しましたが、社員・家族への人的被害はありませんでした。在宅医療を支えるヘルスケア事業では、被害が大きかった地区での酸素濃縮器使用患者について、安否確認や予備ボンベ配送などを行いました。

業務継続訓練の実施

事業継続マネジメント(BCM)の一環として、国内各事業所や研究所などでは、毎年、防災訓練と地震避難訓練を実施しています。

2020年度も各事業所で総合防災訓練を実施しました。また、各地の被災情報を集約し、緊急対策本部と現地対策本部が意思決定を行うための情報基盤の整備に着手しました。

安否確認訓練

緊急時の従業員安否確認訓練として、帝人グループのインフォコム(株)の緊急時安否確認システム「エマージェンシーコール」を活用した国内通報訓練を毎年実施しています。2016年度からは、通報後24時間で安否応答が確認できない人に対して、各部署で追跡して再確認をとるというプロセスを入れています。

2020年度は新型コロナウイルス感染症に関する緊急の情報発信を本社地区に対して2回実施しました。安否確認システムを利用した各事業所・部署単位の緊急連絡訓練は、年度通じて150回程度でした。