イノベーション戦略
継続的かつ的確な事業機会創出、市場開拓を加速する仕組み
帝人グループは未来を想像し、未来の社会を支える製品・サービスの創造に挑戦し続けています。テクノロジーの進化により、社会がこれまでにない速さで変容していく中、私たちは「マテリアル」「ヘルスケア」「IT」という異なる事業領域を併せ持つ特徴を活かして、「環境価値」「安心・安全・防災」「少子高齢化・健康志向」の3つのフィールドで課題に立ち向かい、未来の社会を支えます。
帝人グループでは、未来の社会を支える製品・サービスの創造からビジネス構築、そして、利益創出までの一連の活動をイノベーションとして捉え、グローバルな視点で社会のニーズや課題に応えるために、帝人グループならではの総合力と機動力を発揮することを目指しています。帝人グループ内の研究開発では、海外12ヵ所、国内12ヵ所の研究開発拠点からなるネットワークを活かし、グループ各社の連携を強化して組織を活性化するとともに、多様性を互いに尊重し、一体感を持って個々が能力を発揮してイノベーション創出を加速できる仕組みを取り入れています。また、IoTモニタリング技術、AI技術やマテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics / MI)の活用による研究開発力の強化についても取り組んでいます。さらには、帝人グループ内の連携のみならず、外部連携を重視しており、積極的に活用することでイノベーション創出のスピードアップを図っています。
帝人グループの知的財産戦略では、詳細な事業環境分析の結果に基づいて、事業のコンピテンシーとなり得るコアを特定し、知的財産権を戦略的に取得することで、競争優位性を確保するための強固な知財ポートフォリオを構築しています。事業戦略の立案に係る知財情報の解析においては、IPランドスケープ等の手法も取り入れ、ICTツールを駆使して特許情報のみならず非特許情報をもとに技術動向や競争優位性を解析し、その結果を事業上の意思決定に役立てる取り組みを実施しています。
未来の社会を支えるための技術・市場開発

環境価値ソリューション
持続可能な社会の実現に向けた課題に取り組んでおり、航空機や自動車向けに高性能な軽量化素材や部材を開発し、燃費を向上させることでCO2削減に貢献しています。
例えば、高強度で軽量な繊維強化プラスチック部材をはじめ、高強度・高剛性タイヤコード、車両用ブレーキの摩擦材に用いる高機能繊維などが挙げられます。次世代自動車に係る軽量化に対しては、環境先進地域である欧州において自動車向け複合成形材料のデザイン、マルチマテリアル設計・プロトタイピング等の機能を担う拠点として「Teijin Automotive Center Europe GmbH」を立ち上げ、開発を推進しています。クリーンエネルギー化への取り組みとしては、水素ガス用軽量高圧容器や水素用パイプライン、次世代電池用部材を開発しています。
また、ケミカルリサイクル、複合材料のリサイクルの技術課題にも取り組んでおり、環境対応分野に注力した開発拠点として、2021年1月に「European Sustainable Technology Innovation Center」(欧州サステナブル先端技術開発センター)をオランダに設置しました。これによりサーキュラーエコノミーへの貢献をより一層推進していきます。
安心・安全・防災ソリューション
人と地域社会の安心・安全の確保に向けた取り組みにおいて、震災対策に関連する技術では、コンクリート構造物の耐震補強材として、高強度と柔軟性を兼ね備えたアラミド繊維や炭素繊維の開発を進めています。
また、火災から消防隊員を守る防火衣には難燃性に優れたアラミド繊維の製造販売のみならず、IT技術やセンシング技術で熱中症リスクを回避できるスマート消防服など、さらなる高機能化を追求しています。
少子高齢化・健康志向ソリューション
健康で快適な人々の暮らしを支えるべく、医薬品、在宅医療機器、人工関節などの研究開発に加え、培った技術・ノウハウを医療保険外の機能性食品素材にまで展開しています。
また、地域密着型プラットフォームの構築を目指し、24時間対応のコンタクトセンター、訪問看護ステーション、多職種連携情報共有システム「バイタルリンク®」等の独自性のある在宅医療プラットフォームを進化させています。このプラットフォームを未病から医療、リハビリや介護にまで拡充し、人々の健康状態に応じた製品・サービス群を開発しています。
また、世界中で製品・サービスとデジタル技術の組み合わせによるヘルスケアソリューションの価値が高まる中、グローバル市場でのヘルスケア事業展開に 向けたパートナーシップを長期的に強化するため、2020年4月、米国でヘルスケアベンチャーキャピタルファンドMedtech Convergence Fundを立ち上げ、最大で約90百万米ドルの出資を行うことを決定しました。この出資を通じて共同でインキュベーション活動を推進し、画期的なヘルスケア製品・サービスの創出に向けた研究開発機能のさらなる活性化を目指します。
グループ内外の協創で、単独では創出困難な革新的製品・サービスを拡充

- マテリアル × IT
高分子技術×マテリアルズ・インフォマティクス(MI)
モビリティの進化や次世代通信の進展など社会環境が変化する中、それに対応する新しい材料や部材へのニーズを的確に捉えて迅速に提供するために、研究開発においてもデジタルトランスフォーメーション化を進めています。例えば、MIなどの情報科学を取り入れた素材・部材開発を推進し、軽量化・高機能化といった課題に対して、社内に蓄積されたデータのみならず社外の膨大なデータも利用し、社外との協創も取り入れながら新しい価値の創出に取り組んでいます。
- ヘルスケア × IT
医療機器×IT
地域包括ケア領域では、帝人の在宅医療プラットフォーム*にIT 技術を融合し、「人とモノ」「人と人」をつなぐことで健康で快適な人々の暮らしを支える地域密着型プラットフォームの強化に取り組んでいます。そしてさらには、人とモノをつなげるだけでなく、その先のカスタマーにつなぐIoC(Internet of Customers)を目指して、健康・疾病にかかわるデータを活用し、人々が求める疾患の発症予測や重症化予防の製品・サービスの開発を進めています。
- *2,000人規模の全国営業・サービス網、24時間対応のコンタクトセンター、訪問看護ステーション、多職種連携情報共有システム「バイタルリンク®」等
- ヘルスケア × マテリアル
心・血管修復パッチ
大阪医科大学・福井経編興業株式会社と共同で開発している心・血管修復パッチ「シンフォリウム®」は、当社のヘルスケア事業で培ってきた埋込型医療機器技術に高度な繊維技術と生体適合性高分子技術を融 合させた画期的なメディカルデバイスです。心臓手術において心臓や血管壁の患部に心・血管修復パッチをあてがい縫合することで、その一部が患部の生体組織に置換されます。また、伸長性を備えた特徴ある構造のため、成長による再手術リスクの低減が期待されます。臨床試験における主要評価項目の達成を確認し、2023年7 月に厚生労働省より製造販売承認を取得しました。今後、2023年度内での上市を目指すとともに、本製品の海外への事業展開、加えてその要素技術を応用する新製品ラインアップの拡充に取り組んでいきます。
- ヘルスケア × IT × マテリアル
生体情報×IT×センシング用材料
高機能繊維とセンシング技術との融合により、心電や心拍、運動量を高精度かつ連続的にセンシングして可視化できる総合的なウェアラブルソリューションとして「MATOUS™(マトウス)」ブランドを展開しています。医療・健康分野におけるリハビリ、運動による健康増進、スポーツ・トレーニング等への活用や、労働分野における労働負荷低減や技能習得への応用にも取り組んでいます。