サステナビリティ

気候変動への取り組み(TCFDに基づく開示)

「中期経営計画 2020-2022」(以下、本中計)では、「気候変動の緩和と適応」を重要課題(マテリアリティ)として捉え、軽量化・効率化技術を活かして脱炭素社会への移行に貢献するとともに、事業活動に伴う温室効果ガス排出の削減に努めています。
また、帝人グループは、2019年3月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に対する支持を表明しており、TCFDに沿って気候変動に関する情報開示を進めます。

ガバナンス

帝人グループは、気候変動問題に対し、取締役会の指示・監督の下、サステナビリティ、リスクマネジメントの一環として、CSR管掌が統括し取り組んでいます。それらの取り組み方針・計画および進捗は下記のように会議体で審議・報告され、取締役会の指示を受けています。

  • TRM(トータル・リスクマネジメント)コミティーにおいて基本計画の審議・進捗報告し、TRMコミティー審議内容を取締役会に報告(2回/年)
  • 取締役会にてCSR管掌より機能執行報告(1回/年)

戦略

気候変動のリスクと機会

本中計の策定にあたって、2030年の目指す姿から逆算して行ったSDGsの機会とリスク分析の中で、気候変動の各事業にとっての機会を洗い出し、事業戦略に落とし込みました。「気候変動の緩和」を事業の成長機会と捉え、高機能・高付加価値化材料によるモビリティの軽量化や高耐久化を中心とした「環境価値ソリューション」を提供します。「気候変動への適応」では、高機能素材によるインフラ補強材と、ヘルスケアやIT等の技術、サービスを通し、自然災害発生時の被害低減と迅速な復旧に役立つ「安心・安全・防災ソリューション」の提供に取り組みます。

一方、事業活動に伴う地球環境への負荷低減として、脱石炭火力を図るとともに、省エネ・再生可能エネルギー化の推進やプロセスイノベーションなどの技術革新にも取り組みます。

また、気候変動の移行リスク、物理リスクについては、下記の3つの側面から事業への影響を分析するとともに、環境長期目標を設定してCO2排出量削減に取り組んでいます。

気候変動関連の機会とリスク

カテゴリー 主な機会 時間軸 主な取り組み
製品およびサービス・市場 ・気候変動の緩和と適応に資するソリューションの提供による収益の拡大 短期~長期 ・軽量化・効率化の技術を活かした「環境価値ソリューション」の提供
レジリエンス 短期~長期 ・自然災害発生時の被害低減と迅速な復旧に役立つ「安心・安全・防災ソリューション」の提供
カテゴリー 主なリスク 時間軸 主な取り組み
移行リスク 政策および法規制 ・炭素税や欧州連合域内排出量取引制度(EU ETS)などの導入に伴うコスト負担増 短期~長期 ・各種政策動向のモニタリング
・CO2排出量の増減を伴う設備投資を対象としたインターナルカーボンプライシング(ICP)制度の導入
市場・評判 ・自社グループCO2排出量が増大することによる 企業価値の低下やレピュテーションの悪化 中期~長期 ・国内外の関係会社も含めた自社グループCO2排出量の管理
・環境長期目標達成に向けたロードマップの策定
物理リスク 急性・慢性 ・台風や洪水などの激甚化や長期的な気温上昇、海面上昇などの気候変化に起因する事業活動の中断 短期~長期 ・BCP(事業継続計画)の随時見直しや各種防災訓練の実施

自社グループCO2排出量(スコープ1+2)削減ロードマップ

帝人グループでは、早期に石炭火力による自家発電設備を全廃し、電力を再生エネルギーに切り替えることなどにより、2050年ネット・ゼロの実現を目指しています。

CO<sub>2</sub>排出量削減ロードマップ(案)

インターナルカーボンプライシング制度*の導入

帝人グループ内のCO2の排出増減を伴う設備投資計画を対象とするインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を2020年度に制定・導入し、2021年度の設備投資より適用開始しています。グループ内・グローバル共通として設定した社内炭素価格(€50/t-CO2)を適用し、仮想的な費用に換算して、投資の判断基準のひとつとして運用します。ICP制度の導入により、CO2排出削減に資する設備投資計画を後押しし、CO2排出削減に関する長期目標の達成を目指すとともに、将来予想されるグローバルでの炭素価格の上昇に備えた対策とします。

  • *社内における炭素価格を設定し、CO2排出量を費用換算することで、排出量削減に対する経済的インセンティブを創出し、社内で気候変動への対応を促すしくみ
  • インターナルカーボンプライシング制度の仕組み

気候変動に関するシナリオ分析

帝人グループでは、気候変動の影響を大きく受ける事業や業界を特定した上で、IEA(国際エネルギー機関)が発表するWorld Energy Outlook等を参考に、2°Cシナリオ・4°Cシナリオ*のもとでの影響度分析を行っています。

  • *2°Cシナリオ:IEA WEO Sustainable Development Scenario/IEA WEO 450Scenario、4°Cシナリオ:IEA WEO Stated Policies Scenario

2020年度には、COVID-19の影響による航空機業界の動向を踏まえたベースシナリオの見直しを行い、航空機向け炭素繊維中間材料の需要成長の後ろ倒しに伴う炭素繊維事業の収益計画の修正を行いました。今後も動向を注視し、適切な投資時期や資源配分を検討していきます。

次期中期経営計画策定にあたっては、改めてシナリオ分析を行っています。また、CO2排出量削減ロードマップに従った次期中計期間における具体策も検討しています。

リスク管理

グループ全体の気候変動リスク管理手法

気候変動リスクについては、グループ重大リスクと位置づけ、TRM体制のもとで管理しており、グループ会社の移行リスク、物理リスクを、TRMのリスクアセスメントにおいて他のリスクとともに抽出して対応しています。

移行リスクに対しては、各種政策動向のモニタリングを行いながら、ネット・ゼロ達成に向けたロードマップを策定し、CO2排出量の増減を伴う設備投資を対象としたインターナルカーボンプライシング制度も導入して、自社グループおよびサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量の削減に取り組むことで、リスクの影響度を抑制していくようにしています。また、気温上昇や海面上昇などの物理リスクに対しては、水害リスクなどの評価を行い必要な対策を実施するとともに、BCPを随時見直し、各種防災訓練を行っています。

リスクマネジメント体制

  1. 1.各事業で現場に則したリスクマネジメントを実施
  2. 2.CSR管掌が、CSR委員会、CSR管掌レビューを通じて各事業でのリスクマネジメント状況を確認・指示を行う
  3. 3.TRMコミティーにてCSR管掌がグループ全体のリスクマネジメントに関して報告・提案し、審議・指示を行う
  4. 4.取締役会にTRMコミティーでの討議内容をCSR管掌役員より報告、TRM基本計画を審議

指標と目標

ネット・ゼロの実現に向けた取り組みを加速すべく、「自社グループ温室効果ガス排出量」については、2030年度に2018年度比20%削減する目標を30%削減*にまで引き上げました。当該目標は「2°Cを十分に下回る目標水準(Well-below 2°C)」であるとして、パリ協定の定める目標に科学的に整合する温室効果ガスの排出削減目標「Science Based Targets(SBT)」の認定を受けています。

また、「サプライチェーンの温室効果ガス排出量」を2030年度に2018年度比15%削減する数値目標も設定しました。

  • *2013年度当時の排出量実績比47%削減に相当(参考情報:日本政府目標2013年比46%削減)

CO2削減貢献量

帝人グループは、これまで培ってきた軽量化・効率化の技術を活かし、サプライチェーン全体でCO2削減を目指します。当社製品使用によるサプライチェーン川下でのCO2削減効果を貢献量として算出し、2030年度までの早い段階にCO2削減貢献量をグループ全体およびサプライチェーン川上におけるCO2総排出量(スコープ1+2と上流のスコープ3)以上にすることを目指します。

グループ目標

2030年度までにCO2総排出量 < CO2削減貢献量達成

自社グループCO2*1排出量*2

自社排出温室効果ガスを2030年度までに2018年度比30%削減し、2050年度までに実質ゼロにすることを目指しています。

  • *1CO2以外に、メタン、一酸化二窒素を含む
  • *2GHGプロトコルを参考に算定。他社に販売したエネルギー量に相当するCO2排出量は控除していない。燃料の排出係数は地球温暖化対策推進法に基づく係数を使用。電力の排出係数は、国内は電力会社別の調整後排出係数、海外は原則電力会社固有の係数を使用しているが、電力会社固有の係数を把握できない場合、国際エネルギー機関(IEA)公表の最新年の国別排出係数を適用

グループ目標(KPI)

2030年度 30%削減(2018年度148万t-CO2対比)
2050年度 実質ゼロ実現

サプライチェーンCO2排出量*

2020年度に、サプライチェーンのCO2排出量の2030年度までの目標を定めました。このサプライチェーンCO2排出量の目標については、スコープ3の排出量のうち、カテゴリー1(購入した製品・サービス)の商社ビジネスを除く範囲を対象としています。

  • *スコープ3排出量のうち、カテゴリー1(購入した製品・サービス)を対象。ただし、繊維・製品事業にて販売目的で購入した商品に関するカテゴリー1の排出量は除く。購入した製品・サービスの購入重量または購入金額に、重量または金額単位の排出原単位を乗じて算定。金額単位の排出原単位は、環境省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位 データベース(Ver.3.2)(2022年3月)」(排出原単位DB V3.2)の原単位データを採用。重量当たりの排出原単位は、Ecoinvent Database (Ecoinvent Associationが運営)またはGaBi Database (Sphera社が運営)の原単位データを採用

グループ目標(KPI)

2030年度 2018年度比15%削減

CO2排出量削減に向けた取り組み

CO2削減貢献量

2021年度のCO2削減貢献量は、COVID-19の影響からの各用途販売量の回復に伴い、前年度比49%増の2.46百万t-CO2となりました。

CO2総排出量とCO2削減貢献量の推移

CO2総排出量* CO2削減貢献量
2019年度 5.35百万t-CO2 3.28百万t-CO2
2020年度 5.18百万t-CO2 1.65百万t-CO2
2021年度 5.07百万t-CO2 2.46百万t-CO2
  • *CO2総排出量は、スコープ1、スコープ2および、スコープ3のうちカテゴリー(C)1(購入した製品・サービス)、C2(資本財)、C3(スコープ1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動)、C4(輸送、配送(上流))、C5(事業から出る廃棄物)、C6(出張)及びC7(雇用者の通勤)を対象に算出。

自社グループCO2排出量

2021年度の自社グループCO2排出量は、COVID-19の影響からの生産回復に伴い、前年比では1%増の1.38百万t-CO2保証対象指標となりましたが、2018年度比は7%削減となりました。なお、2021年度のスコープ1の排出量は0.77百万t-CO2保証対象指標、スコープ2の排出量は0.61百万t-CO2保証対象指標となりました。

今後、脱炭素社会の実現に向け、早期に石炭火力による自家発電設備を全廃し、電力を再生可能エネルギーに順次切り替えていくことで、事業成長と温室効果ガス排出のデカップリングを進めます。

自社グループCO2排出量の推移

  • *CO2以外に、メタン、一酸化二窒素を含む。CO2排出量は、GHGプロトコルを参考に算定。他社に販売したエネルギー量に相当するCO2排出量は控除していない。燃料の排出係数は地球温暖化対策推進法に基づく係数を使用。電力の排出係数は、国内は電力会社別の調整後排出係数、海外は原則電力会社固有の係数を使用しているが、電力会社固有の係数を把握できない場合、国際エネルギー機関(IEA)公表の最新年の国別排出係数を適用

サプライチェーンCO2排出量の推移

2021年度は、前年度比5%減の2.56百万t-CO2保証対象指標となり、2018年度比11%減となりました。

サプライチェーンCO2排出量の推移保証対象指標

  • *スコープ3排出量のうち、カテゴリー1(購入した製品・サービス)を対象。ただし、繊維・製品事業にて販売目的で購入した商品に関するカテゴリー1の排出量は除く。購入した製品・サービスの購入重量または購入金額に、重量または金額単位の排出原単位を乗じて算定。金額単位の排出原単位は、環境省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位 データベース(Ver.3.2)(2022年3月)」(排出原単位DB V3.2)の原単位データを採用。重量当たりの排出原単位は、Ecoinvent Database (Ecoinvent Associationが運営)またはGaBi Database (Sphera社が運営)の原単位データを採用

物流分野におけるCO2排出量低減

2021年度の物流分野におけるCO2排出量は6.52千トン保証対象指標となり、2020年度から0.64千トン増加しました。

2021年度は、COVID-19の影響を受けながらも経済の回復に伴って、全体の延べ貨物輸送量は増加(5.3千トンキロ/年の増加)しました。

継続的な物流での環境負荷低減施策として、2021年度もトラック積載率の向上、モーダルシフト(JR輸送、船便活用)を可能な限り実行したものの、物流混乱によるドレージ距離の増加や小型トラック輸送の増加によって、CO2排出量は前年よりも増加しました。

こうしたことから、グループ全体の物流分野における「CO2排出量原単位」は前年対比0.04増加となりました。基準となる千トンキロ当たり原単位(トンCO2/千トンキロ)は、2011年度を1とした指数では1.10保証対象指標となりました。

2022年度に関しては、揚げ地変更によるドレージ距離の短縮やコンテナラウンドユースのほか、大型車両化(まとめ輸送の拡大)やトラック積載率向上、モーダルシフトを継続して推進し、原単位の低減に努めます。

物流分野におけるCO<sub>2</sub>排出量と原単位の推移
  • *物流におけるCO2排出量の各年度の集計範囲は以下の通り
    2011年度:帝人(株)(アラミド事業を除く)、帝人フィルムソリューション(株)及び帝人フロンティア(株)に統合された旧帝人ファイバーのアパレル事業
    2017年度:帝人(株)、帝人フィルムソリューション(株)、帝人フロンティア(株)、帝人ファーマ(株)、東邦テナックス(株)、帝人コードレ(株)、帝人エンジニアリング(株)
    2018年度及び2019年度:帝人(株)、帝人フィルムソリューション(株)、帝人フロンティア(株)、帝人ファーマ(株)、帝人コードレ(株)、帝人エンジニアリング(株) ※旧東邦テナックス(株)は、2018年度に帝人(株)に事業移管・統合
    2020年度:帝人(株)、帝人フロンティア(株)、帝人ファーマ(株)、帝人コードレ(株) ※帝人フィルムソリューション(株)及び帝人エンジニアリング(株)は対象外
    2021年度:帝人(株)、帝人フロンティア(株)、帝人ファーマ(株)、帝人コードレ(株)※帝人エンジニアリング(株)は対象外