サステナビリティ

人的資本

人的資本の考え方

帝人グループは、パーパス「Pioneering solutions together for a healthy planet」を軸に、長期ビジョン「未来の社会を支える会社」を目指しています。このビジョンの実現に向けて、経営戦略・事業戦略を着実に推進するためには、人財の充実とその活躍を支える環境の整備が不可欠であることを改めて認識しています。製造・開発など事業の根幹を担う人財に加えて、グローバルに価値を創出できる人財、そして変化する事業ポートフォリオに柔軟に対応し、挑戦とイノベーションを牽引できる人財の確保と育成が急務です。当社は、こうした人財が最大限に能力を発揮できる組織・環境の構築を含めた人事戦略を策定し、着実な実行を通じて、持続的な企業価値の向上を目指してまいります。

人的資本の考え方

帝人グループは、「人財」を究極の経営資本と位置づけています。

  • 帝人グループに集う多様な社員が、それぞれの人間的成長や豊かな人生を実現できるよう、会社は魅力的な働く環境を整備し、社員の自律的なキャリア形成を支援します。
  • 事業の成長には、組織と人財の能力開発・発揮が不可欠であり、それに必要な「組織設計」「採用」「配置」「人財開発」「評価・処遇」等といった一連の人事施策を通じて、適所適材を実現します。

ガバナンス

帝人グループは、全経営役員をメンバーとする「グループ人事/D&I会議」(2024年度は15回開催)にて、役員およびグローバルレベルで重要なポジションにおけるサクセッションプランの検討状況の共有や個別アサインメントの検討、経営者育成に向けた施策に関する議論を実施しています。また、人的資本や多様性を含めた人事・人財育成に関わる事項のうち重要なものについては経営会議および取締役会に報告されます。これらの活動は、人事・総務管掌(CHRO)を責任者として、国内の人事部門の部長、事業本部の人事トップマネージャー等と連携して進めています。

人事戦略

パーパス軸、中期経営計画実現のための戦略軸の両面で、最適な「組織」と「人財」の在り方を検討し、目指す姿と現状とのギャップから、人事戦略の大きな柱を、「戦略を実装する『適所』の確立と『適材』の確保」と「人財が活躍するための施策」としました。

戦略を実装する適所適材

グローバルジョブポスティングの拡充

社員が自律的にグローバルなキャリア形成を行える環境づくりや、適所適材を推進するため、社内公募制度(ジョブポスティング制度)をグローバルで展開しています。2024年度は、日本とオランダの4つのポジションに対し、日本・ヨーロッパ・アメリカ・アジアから計6名の応募がありました。職務内容や期待される役割、労働条件等とのマッチング不足のため採用には至りませんでしたが、引き続き、自律的なキャリア形成の機会をグローバルに提供していきます。また国内では、1990年代に社内公募「ジョブチャレンジ制度」が導入され、2023年度からは社内のキャリア機会を知ってもらい社内公募を活性化するため、「ジョブポスティングウィーク*」も開催しています。このイベントでは、公募部署の所属長がオンライン説明会を通じて職場や業務内容の紹介を行い、参加者と双方向のコミュニケーションを取ることができる機会を提供しています。2024年度の募集件数は、日本とグローバル全体で105件(23年度95件)に達しました。2025年度は、グローバルでのジョブポスティングの成立と拡充に向けて注力していきます。

  • *日本のジョブチャレンジ(社内公募制度)の募集に合わせて、帝人グループの職場や仕事内容、そこで働けることの魅力などを、それぞれの組織の責任者が紹介し、社員は直接質問することが可能。双方向のコミュニケーションが取れることが特徴で、2023年時はリアルとオンラインのハイブリッド型の6日間のイベントを開催。2024年度以降は年2回、オンラインで実施。

「ジョブポスティング」によるキャリアの実現

T・F
コーポレート新事業本部 再生医療・埋込医療機器部門 再生医療戦略部 事業企画グループ
(2023/9募集-2024/7着任)

これまでの経験を活かせる新しい領域を探していた時、ジョブポスティングウィークを知りました。このイベントで職場の雰囲気を理解できたことで、その後のコミュニケーションをスムーズにとることができました。現在、これまでの事業企画やロジスティクス、営業などの経験を活かしながら日々挑戦することで、自分が成長できていることを実感しています。海外企業との対応も多く、やりがいを感じており、ゆくゆくは海外に駐在してステップアップをしていくというようなキャリアビジョンを描いています。

FA(フリーエージェント)制度

社員本人が自身の能力・経験などを希望する異動先事業に開示し、異動先事業の選考を受けられる仕組みです。ジョブチャレンジ制度と併せて、社員が自律的にキャリアを形成できるよう支援します。

グローバルジョブグレード体系統合

2024年度は、「帝人グループ 中期経営計画2024-2025」の事業ポートフォリオ変革に基づく事業構造改革を行い、事業戦略の早期実現に向けて事業ごとに最適な組織の在り方を検討してきました。2025年度以降は、事業ごとに設計した組織改変を着実に実施することに加え、海外を含めた帝人グループ全体で管理職以上のジョブグレードを整合させるための第一段階として、海外/国内の主要会社を対象にグローバルで共通のグレードを設定し、人財のモビリティの向上を目指します。

人財ポートフォリオ(コアポスト、専門人財)策定

2024年度は特にコアポストの充実を推進してきました。役員のポストは、各役員がサクセッションプランを策定した後、CEOおよびCHROとの三者面談を通じて、プランをアップデートしています。外部採用の可能性や社内サクセッサーの戦略的配置についても議論し、ポジション就任までの育成を加速しています。コアポストごとに5~7名設定している必要サクセッサー候補者数のカバー率(サクセッサーカバー率*)が2023年度74%から、2024年度は84%に向上しました。

  • *候補者数÷(ポスト数×各ポストに必要な候補者数(最大7名))で算出。例えば、役員は1つのポストに対し最大7名のサクセッサー候補を設定することになっており、7名設定された場合が100% 、6名の場合は86%

人財プールとコア人財育成プログラム

候補者を中心に、人財プール「TMSP(TOP MANAGEMENT SUCCESSOR POOL)」を形成しています。TMSPは毎年見直しがなされ、ポジションごとに有望な候補者に集中して戦略的な配置や育成を行います。その配置・育成プログラムが「STRETCH Advanced」であり、次世代経営者育成に向けた複合的・実践的な内容になっています。診断・確認・能力開発の3つのフェーズで構成され、診断フェーズで特定された本人の能力開発領域に応じて、個別のプログラムを実施することで、コア人財を早期に育成します。また「JuMP」(Junior Management Program)という事業横断で優秀者を選抜して中核部長以上のマネジメント候補人財を育成するプログラムも実施しています。

グローバルベースでの職務に基づく評価・処遇の実現

日本国内においては、2023年4月に役員層について、ポジションにおける役割・責任と処遇の関連性を明確にしたジョブ型人事・評価を導入しました。次いで、2024年4月には部門長以上の管理職について、職務の大きさ(幅、難易度、責任の重さなど)に応じて処遇を決める処遇制度に移行しました。2024年度は、その対象を広げ、部長以下の管理職についても移行に向けた準備を進め、2025年4月より制度運用を開始しています。ポジションの職務内容を明確化し、職務に応じた処遇を実現することで、優秀人財の採用力を強化し、適所適材となる人財配置や、個別の人財開発を促進します。

組織・ポジションに見合う最適な人財の確保

経営・事業戦略を実現し、事業競争力を高めるためには、経験豊富な専門性の高い人財を獲得し、即戦力として活躍していただく必要があります。また、異なるバックグラウンドを持つ人財を確保することは、組織内の多様性を促進し、視野を広げ、業務効率の向上やイノベーションにもつながります。


採用・リテンションの状況

項目 2023年度 2024年度
キャリア採用比率 40.9% 59.8%保証対象指標
自己都合離職率 2.5% 1.7%
新卒3年定着率(総合職) 92.2% 91.7%
  • *帝人(株)・帝人ファーマ(株)

自律的なキャリア形成・成長支援

①キャリア構築支援

2024年度は「上司(面談者)向けキャリア面談の進め方研修」を実施しました。2025年度はキャリア形成について本人・上司が話し合う場としてのキャリア面談制度を開始します。また、スキルの習得からリーダーシップ研修まで、オンデマンドで受講できる「任意選択型オンライン研修」を導入するなど、社員が主体的に自身のキャリア形成を進めることができるしくみ・プログラムを整備しました。今後も、社員の自律的なキャリア形成・成長支援を行っていきます。

②人財育成と教育研修の基本的な考え方

帝人グループでは、「社員各自の自己啓発による主体的な研鑽」を促進・奨励し、「現場でのOJT」「配置・ローテーション」「教育研修」と連携して、体系的にグループ人財の育成を図っています。


人財開発実績(2024年度)

教育費用 2億8,700万円
教育時間 延べ37,417時間
教育人数 延べ813名
  • *帝人(株)・帝人ファーマ(株)
  • *人財開発グループ管轄の研修に限定

人財育成と教育研修の基本的な考え方

人財育成の基本は、社員各自の自己啓発による主体的な研鑽を促進・奨励することにある。

  1. 1.現場でのOJT

    上司が日常業務を通じて部下を個別に育成・指導することにより、自己啓発・研鑽を促す手段。仕事に対する緊張感や、仕事の完成に向けてのプロセスを通じた充実感・達成感を与え、部下の成長を支援する。

  2. 2.配置・ローテーション

    個々人の能力開発・伸長の機会であり、さらなる自己啓発・研鑽を促す手段。上司は、部下の長所や個性を的確に把握するとともに、本人との面談等で得た情報を踏まえて、適正な配置・ローテーションに努める。

  3. 3.教育研修

    経営ニーズと現在および将来の職務遂行に必要な要件を踏まえた内容を提供し、個々人の自己啓発・研鑽の契機となる機会を提供する「Off-JT」手段。上司は、部下を教育研修に積極的に派遣することにより、グループ内外社員との相互啓発、視野の拡大を図る。

  4. 4.キャリア開発・360度評価

    年に1回、社員と上司がキャリアについて面談をする機会を持ち、社員のキャリア開発を行う。また、社員自身の気付きを促すため、全管理職社員を対象に360度評価を行う。人事考課の結果は、上司から本人にフィードバックをし、社員の成長につながる指導やアドバイスを伝える。人事考課の結果に納得できない場合は、人事部へ直接申告できる制度を活用する。

③教育研修プログラム

◆DX人財育成

帝人グループでは、自律的DXの推進に向けて人財育成を重要な戦略課題と位置づけており、帝人独自に定義したDX人財の類型に従って、DX人財育成ロードマップとDX人財キャリアパスを策定し、より高度なDX人財の育成を目指しています。


2023年度から継続して初級教育に取り組み、グローバル社員を対象としたデジタルリテラシーを底上げするリテラシーコース、管理職を対象とした意思決定力を養うマネージャーコース、リテラシーコースの成績優秀者を対象としたDXプロジェクトの企画力を養うアドバンスコースを実施しています。2025年度からは各事業から選抜された社員を対象に、「ビジネスアーキテクト」においてデジタルを活用して事業課題を解決する力を養う中級教育を実施予定です。


◆新入社員チューター制度

新入社員が配属先に配属された後は、「チューター」と呼ばれる若手先輩社員が新入社員一人ひとりに選任され、新入社員のサポートを行います。業務の習得へのサポートだけでなく、自律的成長を促すために、定期的な面談を通じてアドバイスやフォローを行っています。

◆女性社員リーダーシップ・キャリア研修

女性向けのリーダーシップ・キャリア開発として、2024年度以降、社外メンターによる、女性社員向けのメンタリングプログラムを実施し、女性社員の視野拡大、意識の醸成に取り組んでいます。

◆海外実務研修制度

若手社員が海外グループ会社で実務を経験するとともに異なる文化的背景、慣習、視点に対する認識や理解を深め、相互に尊重する意識を高めることを目的として、人的ネットワークを構築するための制度です。

◆転進援助制度(組合員のみ)

定年前に退職し自ら雇用機会を開発しようとする社員の生涯生活設計を支援することを目的として、通常の自己都合退職一時金・年金に加え、特別加算金を支給し、転進に有用な知識・技能の習得、その他諸準備を行うことを目的として、転進準備期間を設定することができる制度を整えています。

◆その他プログラム

従業員の越境学習を促し、より成果にこだわる姿勢を学ぶ「ベンチャー留学制度」や、企業に勤めながら、自身の専門知識や経験を活かして社会貢献する活動である「プロボノプログラム」、社内ネットワーキングを目的とした「社内ランダム会議」などを提供することで、従業員の社内外での人的ネットワーク促進に取り組んでいます。

④人事考課制度

目標管理(MBO)では、半年に1回、上司が自組織の目標・方針を明示し、社員はそれに基づき、自身の職級や組織内でのポジションの期待役割を踏まえて、目標を設定します。半年後『どのように取り組み、どれだけの成果を残したか』という実績に対して評価がなされ、その評価が賞与・昇給・昇進に反映されます。なお、各自の評価については、上司から面談を受ける中でフィードバックがなされます。また会社は管理職を対象として、2年に1度、多面観察評価(360度評価)を実施し、管理職は多方面からの評価や率直なフィードバックを自身のマネジメントに生かしています。

人財が活躍するための施策

グローバルで帝人グループに集う多様な社員が、自らの能力やスキルを最大限に発揮し生き生きと働き活躍することが必要です。社員が活躍できる環境を整備するため、「DE&Iの推進」、「エンゲージメント向上」を進めています。

1)DE&Iの推進

帝人グループは、多様な人財を活用することが創造性を高め、イノベーションを促進するとの考えから、2000年に女性活躍推進の専任組織を、トップダウンで設置しました。以降、テーマを国籍、障がい者、LGBTQ+関連などにも広げ、多様な社員が活躍できる企業風土醸成に取り組んできました。事業のグローバル化に伴い、日本を中心とした取り組みを世界に広げ、役員層の多様性推進のためのKPIを設定しています。また、これまでは、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂性)を推進していましたが、社員の属性やニーズがさらに多様化している状況の中、今後は、一人ひとりが最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、個々に合わせた支援と、公平な土台をつくり上げる「エクイティ」の観点でも施策も検討、実施していきます。

①女性活躍推進法に基づく行動計画と女性活躍推進

帝人グループは、2000年に女性活躍推進の専任組織を設置しました。以降、子育てと仕事の両立支援制度の拡充などのハード面と、女性のキャリア意識の醸成やアンコンシャスバイアス研修、社内外のネットワーキングづくりなどのソフト面の両面から、さまざまな取り組みを実施しています。2024年度からの新しい行動計画では、女性役員のパイプライン形成、また部課長として活躍する女性を増やすため、事業本部ごとに女性部課長の比率目標を設定し、事業本部内での計画的な育成と登用を実施しています。

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画表

取り組み1:女性役員のパイプライン形成のための施策

取り組み2:女性管理職および管理職候補層の育成のための施策

取り組み3:ロールモデルとのマッチング

出光興産株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、株式会社リコーとの企業横断クロスメンタリングキックオフ

女性リーダーの育成・登用促進に注力しています。日本においては、女性の採用強化、育児との両立支援、健康リテラシー向上セミナーなど、さまざまなライフステージに応じて女性が自分らしく働き続けるための定着支援に加え、メンタリングなどによるキャリア支援強化にも取り組んでいます。2024年度より、女性が自分らしいリーダーシップを発揮できるよう、階層別に各種プログラムを実施しています。上級管理職の層に対しては、役員のパイプラインの構築に向け、企業横断クロスメンタリングを導入しています。このプログラムでは参加企業の役員層が他社の女性管理職のメンターとなり、メンティは他社の経営層から直接示唆を受けることで視座を高め、視野を拡大し、キャリア意識を醸成します。メンターにとっても、マネジメントの幅を広げることにつながり、また、参加者同士の交流の機会を作ることで、社内外のネットワークの醸成にもつながっています。初級管理職、管理職手前の層には、社外の複数のメンターと対話できるメンタリングプログラムの実施や、他社と合同での女性リーダーシップ研修に参加する機会を設けるなど、自分自身のありたい姿を内省し、キャリアに対する視野を広げる機会を設けています。

また、社会貢献活動の一環として、女子学生が理系の仕事に進む後押しをする目的で企画された内閣府が中心となって取り組む「理工チャレンジ(リコチャレ)」にも2021年度より参加しています。2025年8月には、「電波で繋がる世界」を大阪本社で開催し、20名を超える中高生と一緒に電波や理工系キャリアについて学びました。理工系の若手社員のグループに企画から運営まで任せることにより、社内でのネットワークの形成にもつながっています。


女性社員数と女性社員比率・女性管理職比率・女性役員比率

  • *北米で自動車向け複合成形材料事業を営むマテリアルセグメントの連結子会社であるTeijin Automotive Technologies NA Holdings Corp.(以下、TAT-NA)は非継続事業のため、2024年度から集計対象外に変更。過去の値はTAT-NAを含み、2024年度はTAT-NAを含まない数値。なお、カッコ内はTAT-NAを含む参考値であり、第三者保証対象外
  • *各年度3月31日時点の在籍者(帝人(株)およびその連結子会社以外の会社への出向者を含み、外部からの受入出向者を含まない)。2022年度までは一部持分法適用会社の人数を含めていたが、2023年度からは帝人(株)およびその連結子会社のみを集計対象。管理職は、課長相当以上の役職を対象

男性育休取得率

当社グループでは、性別に関係なく誰もが育児支援の制度を利用できる企業風土の醸成に取り組んでいます。帝人(株)では、2022年度に育児休業取得時に個人の積立年休を利用することで、男女ともに最大55日間給与が支給されるように制度を改定しました。また、トップによる育児休業取得を推奨するメッセージの発信や、男性の育児休業取得者の経験談を社内報やイントラ等で周知するなどの取り組みを実施しています。2024年度の男性育児休業取得率は67.9%保証対象指標となりました。

  • *男性育児休業の取得率は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則第71条の4第1号に定める方法により算出
  • *帝人(株)・帝人ファーマ(株)

男女の賃金差異

当社グループでは、給与制度における性別による差異はないものの、下記のような調査結果となりました。男女賃金差異については、一部を除き全体的に賃金差異は縮小されました。

  2023 2024 前年比昇降差
  全労働者 正社員 パート 全労働者 正社員 パート 全労働者 正社員 パート
帝人 77.9% 81.2% 58.0% 78.2%保証対象指標 81.2%保証対象指標 59.9%保証対象指標 +0.3% 0 +1.9%
帝人ファーマ 47.5% 70.5% 31.1% 49.8% 71.4% 37.3% +2.3% +0.9% +6.2%
  • *賃金:基本給、賞与、時間外労働手当のほか各種手当(通勤手当は除く)の合計額(退職手当は除く)。海外出向者は出向先が実質的な賃金を負担しているため集計から除外

また、差異の主な原因は下記の通りです。

  1. 1.職級が高くなるに従い、同一職級の中でも女性比率が低くなります。このような労務構成が男女の賃金差異につながっています。
  2. 2.基本給以外の諸手当の支給実績で男女差があるケースがあり、これが男女の賃金の差異につながっています。
  3. 3.育児や介護のための短時間勤務制度を利用する男性従業員は少なく、これが男女の賃金の差異につながっています。

なお賃金差異は、差異縮小の方向にあり、一定の水準を維持しておりますが、上記の実態把握の中で判明した男女の賃金差異を生じさせる原因を把握し、引き続き女性管理職の計画的な育成と登用、ジェンダー意識の改善、また人事制度の更なる検討の余地を探るなど、賃金差異の縮小に積極的に取り組んでまいります。

②障がい者活躍推進

障がい者が、社会に参画して経済的自立を果たすことは、多様性のある共生社会を実現する上で重要です。特例子会社の帝人ソレイユ(株)では、主に知的・発達・精神に障がいのある方を雇用し、オフィスサポート事業(事務補助業務、清掃)と農業事業(オーガニック野菜、エディブルローズ、胡蝶蘭の生産・販売)を展開し、障がい者一人ひとりの特性に応じた活躍の場を作っています。ハンディキャップがあっても能力を発揮することで、会社・事業に貢献するだけでなく、自らが経済社会を構成する労働者の一員であることに"やりがい"と"誇り"を感じられることを目指しています。また、帝人ソレイユ(株)では農業事業において売上増加および営業利益黒字化を目標に販売拡大に取り組んでいます。


帝人ソレイユと胡蝶蘭

帝人ソレイユ株式会社
取締役社長補佐(農業事業統括)
鈴木崇之(写真左奥)

胡蝶蘭事業においては、花が大きい胡蝶蘭を出荷しており、障がい者の強みを活かした丁寧な栽培と管理により、市場平均単価を2割ほど上回って取引されています。また大手企業がリピーターとなり、取引先の社長就任祝いなどに利用されています。胡蝶蘭の花言葉は「幸せが飛んでくる」で、人生の大切な場面で相手を思う気持ちを表すために選ばれる花でもあります。発達障がいのある20代男性は、特別支援学校(高校)を卒業後に縁あって当社に入社しました。彼が丹精込めて育てた3本立ての胡蝶蘭を祖母に贈った際、感動のあまり涙を流して喜んでくれたそうです。人には必ず「得意なこと」があり、障がいのある方の中には感受性が豊かであったり、高い集中力を持っている方がいます。当社は、そのような強みを活かし、「障がい者だからこそ成し得る高品質を提供する」という信念を体現しています。障がいのある方々の潜在力を引き出し、彼らに前向きな未来を築くきっかけを提供することは、とても意義深いことだと考えています。

2025年3月時点での帝人(株)・帝人ファーマ(株)・帝人ヘルスケア(株)・帝人ソレイユ(株)における障がい者の雇用率は2.86%で、法定雇用率である2.5%(2025年3月時点)を上回っています。2021年度にはノウフク・アワードで特例子会社として初のチャレンジ賞を受賞、2023年度はもにす認定を受けました。

③LGBTQ+活躍支援

LGBTQ+当事者の活躍のため、2017年以降、①会社としての方針明示、②社員への啓発活動、③当事者に配慮した人事給与の制度改定、④当事者への支援の取り組みを実施してきました。特に、社員への啓発活動と当事者への個別支援に重点を置いています。LGBTQ+当事者の経験や想いを理解するためのイベントや階層別研修でLGBTQ+について理解を深める研修を実施しました。また、当事者の従業員からの相談にも個別に対応しています。

④DE&I意識啓発の展開

グローバルに事業活動を推進する上で、国籍・人種・性別・価値観・発想・経験などが異なる多様な人財の能力を活かすことは不可欠です。帝人グループは、バリューの一つに「多様な仲間と専門性を活かして成長します」を掲げ、一人ひとりの個性と魅力を活かし、能力を最大限に活用できる環境を整備しています。2002年からDE&I意識啓発のための冊子「together」を発行し、2020年版からは、グループ全社員に配布するため、日本語版に加え英語版・中国語版も作成しています。2023年度は、「なぜ帝人にD&Iが必要なのか?~今、改めて考える多様な人財活用の意義~」をテーマにCEOと女性の社外取締役の対談を巻頭特集として取り上げ、DE&I推進はレジリエントな組織を築いて、長期ビジョンを実現するための必要な手段であることをトップメッセージとして改めて明示しました。2024年度の最新号では、「キャリア自律の時代へ ~変革期を生き抜く私たちの選択~」をテーマにCHROと社員の対談を実施し、多様なキャリア選択の在り方や人財流動性を高めていく必要性、自律的にキャリアを築いていくことの大切さについて語り合いました。

2)エンゲージメントの向上

事業戦略の達成には、社員一人ひとりが会社の理念に共感し、仕事に意欲的に取り組むエンゲージメントの高い組織を築く必要があります。特に、事業や地域を超えてシナジーを創出することが急務となっていることを踏まえ、年に1回、グループ全体でエンゲージメントサーベイを実施し、"One Teijin"を強く意識したエンゲージメント向上の取り組みを推進しています。サーベイでは「満足度」「やりがい」「ウェルビーイング」「キャリア」「カルチャー」などに関連する質問を調査しています。2024年度は国内外のグループ社員約19,500人を対象として実施(回答率76%)した結果、エンゲージメントスコアは64と前年比2ポイント上昇しました。すべての質問、事業、地域においてスコアが改善もしくは維持され、全社的にエンゲージメントの向上が見られました。グループ全体のエンゲージメント改善の一つに「コミュニケーション」があり、タウンホールミーティングやパーパスワークショップを実施するなど、社員一人ひとりの考えや想いを共有する場を定期的に設けています。

2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
エンゲージメントスコア 64 64 62 64
回答率(%) 70 68 71 76

【事例紹介】AIを活用したデータドリブンな取り組み

2024年度よりDX推進部と連携し、AIを活用したデータドリブンなアプローチでエンゲージメント向上の支援を強化しています。サーベイの結果をダッシュボード化してイントラネット上で社員に公開し、役員向けには事業や部門ごとの結果を一目で確認できるように可視化しています。一部事業では試験的にAIを活用し、有休消化率や残業時間、定性コメントなどの分析をもとに、推奨アクションを提示しています。サーベイの結果から算出した「行動の開始」のスコアと、エンゲージメントスコアに正の相関があることを、図表を用いて可視化することで、納得感を持って各組織が改善に向けたアクションを実行しています。

人的資本に関するKPI

人事戦略の柱のひとつである「人財が活躍するための施策」による効果を測るため、役員層・管理職層の多様性と社員エンゲージメントに関する指標を設定しています。計画的な育成と登用で役員層・管理職層の多様性を改善し、エンゲージメント改善アクションの設定と実行で社員エンゲージメントを向上させ、目標の達成を目指します。


多様性に関するKPI

    2023年10月
実績
2024年10月
実績
2026年4月
マイルストーン
2030年4月
目標
役員*1 女性 12% 20% 20% 30%
外国籍 8% 8% 10% 30%
管理職*2 女性部課長 10% 11% 12% 20%

社員エンゲージメントに関するKPI

  2023年9月
実績
2024年9月
実績
2026年4月*3
マイルストーン
2030年4月*3
目標
社員エンゲージメントスコア 62 64 64 68
  1. *1取締役、監査役(2025年6月以降は監査等委員である取締役)、グループ執行役員
  2. *2日本を含めたグローバルでラインポストに就く役職者
  3. *3前年9月実施分

働き方

働きやすい環境

テレワーク制度

帝人(株)、帝人ファーマ(株)では、2019年度より、育児・介護などの事由がなくともオフィス以外での勤務も可能な「テレワーク制度」を導入しています。2020年度からはCOVID-19感染拡大防止のため、このテレワーク制度を臨時措置として拡大活用していましたが、現在は、事業本部ごとの業務実施方法に応じたテレワーク上限時間を設定し、柔軟な働き方が実現できるようにしています。今後もテレワーク制度と職場での対面によるコミュニケーションを効果的に組み合わせ、組織の生産性をさらに高めつつ、働き方の柔軟性を高めることで社員一人ひとりが持てる力を最大限に発揮できるよう制度の拡充に努めていきます。

残業時間/実労働時間の管理

社員が心身ともにストレスのない環境で健康に働くことが、企業の持続可能な成長を支える原動力になると考え、健康経営に力を入れており、当社は9年連続で健康経営優良法人認定を受けています。特に社員の心身の健康を維持するために労働時間を適正化するため、計画的に年次有給休暇の取得奨励、時間外労働の事前申請の徹底やノー残業デーを導入しています。さらにRPA*を活用した業務の標準化・平準化に取り組んでいます。また、テレワーク勤務、フレックス勤務、短時間勤務制度など、社員一人ひとりの状況やライフステージに応じた柔軟な働き方を実現し、時間や場所にとらわれず、社員がより良いワークライフバランスを保てる環境づくりを進めています。

  1. *Robotic Process Automation

年次有給休暇の促進

入社1年目は年間15日の有給休暇が取得可能で、以降勤続1年につき1日ずつ加算され、年間20日を上限として毎年付与されます。翌年まで最大40日繰り越すことも可能です。年次休の計画取得によるワークライフバランスの向上と総労働時間短縮を推進するため、毎年、年次休取得奨励日を定めています。

働き方関連項目*1

2023年度 2024年度
月間平均時間外労働時間*2 13.3h 13.2h保証対象指標
年次有給休暇取得率 75% 76%
  1. *1帝人(株)・帝人ファーマ(株)
  2. *2非管理職(総合職・一般職)

仕事と個々のライフイベントとの両立

育児と仕事の両立支援

2000年に女性活躍推進室が設置されて以降、子育てと仕事の両立にも継続して力を入れています。短時間勤務制度を子の小学校3年生の年度末まで利用可能とし、積立年休の利用による休職中の賃金補助や、ベビーシッター利用時の費用補助を行うなど、男女を問わず社員が子育てをしながらでも働きやすい柔軟かつ多様な制度設計と、制度の運用促進のための対応マニュアルを作成し、上司を含めた職場の理解と円滑なコミュニケーションを促しています。2024年度に更新した「次世代育成支援対策推進法(改正次世代法)に基づく行動計画」では、下記の通り目標を立て、子育てと仕事を両立させながら、社員一人ひとりが、より生き生きと働ける環境の構築に力を入れています。また、都市部を中心に保育園が不足し、保育園が決まらず、予定していた時期に育児休職から復職できないケースに備え、育児休職中の「保活」支援をしています。「子育てみらいコンシェルジュ」のサポートで、よりスムーズな復帰につなげています。

目標1:子の出生後も自律的にキャリア形成できる環境整備

目標2:男性の育児参画の機会増加

目標3:子育てをしている社員がワークライフバランスを実現できるようにするための働き方改革

家族の介護と仕事の両立支援

今後、少子高齢化が進むにつれ両親などの家族の介護をするケースは、さらに増加していくことが見込まれます。社員一人ひとりが家族の介護と仕事を両立できるようにすることは、会社としても取り組むべき重要な課題です。介護の短時間勤務の適用期間を「介護が必要な期間中」とし何度でも分割利用を可能とするなど、必要な期間・時期が予測しにくい介護の特徴などを踏まえた制度設計をしており、社員が介護をしながらでも安心して働き続けられる環境を構築しています。また、介護に関する知識や制度周知のための介護セミナーの開催や、社員が実際に介護に直面した際にどうしたら良いかを相談できる「介護コンシェルジュデスク」や介護情報を閲覧できる「わかるかいごBiz」を利用できるようにするなど、ソフト面でも両立を支援しています。

社員の私傷病と仕事の両立支援

病気治療等短時間勤務制度を導入し、がんをはじめさまざまな病気に罹患した社員や、不妊治療を受けている社員の仕事と治療の両立を支えています。また、疾病ではありませんが、女性の生理時の心身の不調などを男性に理解してもらう目的で、2022年度より連続して女性の健康をテーマとしたセミナーを開催しました。また、新任管理職研修において、女性の健康に関するリテラシーを高めています。

その他支援制度、福利厚生

いきいきとした社員・活力のある職場を目指し、社員のニーズに合わせて利用できる各種支援制度、福利厚生(法定外)等を提供しています。

各種資産形成支援策

財形貯蓄・住宅融資・持株会・退職年金などがあります。

選択型福利厚生制度(セレクトプラン)

あらかじめ付与された一定の補助枠(ポイント)の範囲内で、複数の施策メニューの中から自分のニーズにあったメニューを自ら考え、選択、利用できる制度があります。

資格取得支援制度

あらかじめ付与された一定の補助枠(ポイント)の範囲内で、複数の施策メニューの中から自分のニーズにあったメニューを自ら考え、選択、利用できる制度があります。

ハローアゲイン制度

結婚や育児・介護等、家庭の事情で帝人グループを退職した場合でも一定の条件を満たす場合は、再度帝人グループで活躍することができる制度です。

配偶者海外転勤同行休職制度

帝人(株)では、社員が配偶者の海外転勤に同行する場合は、3年間の休職ができるようにしています。

ボランティア休職制度

帝人グループはボランティア活動促進の観点から、帝人(株)および帝人ファーマ(株)で有給のボランティア休職制度を導入しています。

帝人グループ労務管理実態の把握

帝人グループでは、グループ各社の労務管理状況を定期的に調査しています。グループ各社の労務管理上の課題を把握し、特に労働CSRの観点から必要な施策を実施しています。労働CSR指標(基礎指標)についての調査書を送付し、毎年、回答を集めています。また、労働関係法規の変更があった場合などは、すべての国内グループ会社に対して、労務管理状況や就業規則、人事制度に関する調査を随時実施しています。なお、国ごとに労働関連法規が異なるため、海外グループ会社に関しては、基本的項目に対して調査を行っていますが、必要に応じて、人事制度や給与制度に関する追加調査を実施しています。

調査内容項目(国内グループ会社)

労働CSR指標(基礎指標)--毎年実施

  1. (1)在籍人員(職位別/性別)
  2. (2)平均勤続年数・平均年齢(職位別/性別)
  3. (3)採用人員(職位別/性別/新卒・キャリア別/事務系・技術系別)
  4. (4)退職人員(職位別/性別/事由別)
  5. (5)定年後再雇用実績(職位別/性別)
  6. (6)役員人員(性別/日本国籍)
  7. (7)有期雇用人員(性別/日本国籍/嘱託/OB/パート)
  8. (8)育児休職/取得日数(平均・最長)/育児短時間勤務利用実績(性別)
  9. (9)介護休職/介護短時間勤務利用実績(性別)
  10. (10)ボランティア休職取得者数(性別)
  11. (11)看護休暇取得者数(性別)
  12. (12)家庭事情による退職者の再雇用制度(性別)
  13. (13)在宅勤務制度利用者数(性別)
  14. (14)外国人労働者数(所属、国籍、性別、職掌、入社年月日)
  15. (15)外国人研修生(技能実習生)受け入れ人数
  16. (16)海外出向者数(日本人の海外企業への出向者)
  17. (17)単身赴任者数(国内・海外)
  18. (18)男女の賃金の差異(正規・非正規、性別、差異理由)
  19. (19)女性活躍推進法の対応状況(行動計画の提出、公開項目)

労務管理実態--随時実施
法対応

  1. (1)高齢者雇用
  2. (2)労働時間
  3. (3)派遣・請負
  4. (4)母性保護・育児
  5. (5)介護・看護
  6. (6)雇用機会均等

労務施策

  1. (1)ワークライフバランス(時間外労働時間/年次・有給休暇取得率/フレックスタイム制度の導入状況など)
  2. (2)退職金制度
  3. (3)ダイバーシティ推進状況
  4. (4)採用・教育
  5. (5)福利厚生制度(社宅・寮/その他課題)
  6. (6)その他課題(現在課題として認識しており支援を希望する内容ほか)
調査内容項目(海外グループ会社)

労働CSR指標(基礎指標)のうち以下について調査(職位別・性別)

  1. (1)在籍人員
  2. (2)平均勤続年数・平均年齢
  3. (3)採用人員
  4. (4)退職人員

健全な労使関係の維持

帝人グループでは、労働組合を重要なステークホルダーと位置付け、健全な労使関係の維持と関係強化に努めています。また、労使関係の基本である「事前協議の徹底と相互理解」を重視しています。労使会議に関しては、帝人(株)では包括労働協約において、会社、組合いずれか一方の申し出により開催できると定めており、これを遵守しています。国内グループ会社については、役員・管理職などを除く社員が労働組合に加入しています。経営層と主な労働組合の役員が一堂に会する「グループ労使経営協議会」や適宜開催される労使委員会などで、事業全般に関する意見交換や職場環境の改善に向けた話し合いを行っています。また春季労働条件改定時にも、ベースアップや報酬の議論にとどまらず、今後目指していくべき人事諸制度の方向性や人財確保・社員の能力開発・モチベーション向上といった人事全般に関する課題を広く議論しています。海外グループ会社では、労働組合やワークカウンシル(労使協議会)を設置して、より良い職場環境と労働条件の実現に向けて、会社と従業員の代表とが協議を重ねています。

帝人(株)、帝人ファーマ(株)、帝人ヘルスケア(株)と帝人労働組合(帝人グループで最大の労働組合)の労働協約 前文

帝人(株)、帝人ファーマ(株)、帝人ヘルスケア(株)と帝人労働組合とは、相互にその地位を尊重し、相協力して事業の健全なる発展と組合員の福祉を図り、産業平和を確立する目的をもってここに労働協約を締結し、双方誠意をもってこれを遵守することを確約する

(注)帝人労働組合との労働協約は、全ての帝人労働組合の組合員(正社員・嘱託社員)に適用されています