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人権

帝人グループ人権方針

帝人グループは、"すべての人間の尊厳と権利を尊重する"という私たちの基本姿勢として、人権方針を制定しています。

帝人グループ人権方針

帝人グループは、企業理念で「人間への深い理解と豊かな創造力でクォリティ・オブ・ライフの向上に努めます」と宣言しています。その実現に不可欠な、「すべての人間の尊厳と権利を尊重する」という基本姿勢として、私たち*1は「帝人グループ人権方針」をここに定めます。

  1. 1.人権に対する基本的な考え方

    私たちは、「人権の尊重は企業として果たすべき重要な社会的責任」であるとの認識の下、事業活動のすべてにおいて、あらゆる人権侵害*2に直接的に関与しないだけでなく、社外の関係者*3を通して間接的にも加担しないよう努めます。

  2. 2.基盤となる原則

    私たちは、国連がすべての人びとの基本的人権について規定した「国際人権章典」(「世界人権宣言」、「市民的および政治的権利に関する国際規約」、「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」)および国際労働機関(ILO)が労働における基本的権利を規定した「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」*4に記されている原則に従います。
    さらに私たちは、「国連のビジネスと人権に関する指導原則」および国連「グローバル・コンパクト10原則」を尊重します。

  3. 3.責任者

    帝人グループCEOが本方針の実践に責任を持ちます。

  4. 4.教育・研修

    本方針がすべての事業活動に組み込まれ、効果的に実行されるよう、私たちは帝人グループの役員と社員に対し、適切な教育を行います。

  5. 5.人権デューディリジェンス

    私たちは、人権デューディリジェンスの仕組みを構築し、人権に対する負の影響およびそのリスクについて把握するとともに、その防止および軽減を図ります。

  6. 6.救済

    私たちは、私たちが人権に対する負の影響を直接的に引き起こしている、あるいは間接的に加担していることが判明した場合、関係者と対話し、適切な手続きを通じてその救済に取り組みます。

  7. 7.情報開示・対話

    私たちは、私たちの人権尊重の取り組みについて、進捗状況と結果をウェブサイトなどで開示し、その内容についてステークホルダーと対話します。

  1. *1「私たち」とは、帝人グループおよびその役員・社員をいいます。
  2. *2人権侵害には、人種、宗教、性(性的指向、性自認、性表現、性的特徴)など、いかなる差別も含まれます。
  3. *3「社外の関係者」には、サプライヤーやパートナーなど、私たちの事業に関係する社外の組織・人のすべてを含みます。
  4. *4中核的労働基準である「児童労働の禁止」「強制労働の禁止」「差別の撤廃」「結社の自由・団体交渉権の承認」「安全で健康的な職場環境」の支持・尊重を含みます。

2019年3月1日開催の帝人株式会社取締役会にて制定を決議
2021年8月3日開催の帝人株式会社取締役会にて改定を決議

取り組み

2011年に国連が策定した「ビジネスと人権に関する指導原則(以下、UNGPs)」や国際労働機関(ILO)が規定した原則*に基づき、人権尊重に取り組んでいます。

  • *中核的労働基準である「児童労働の禁止」「強制労働の禁止」「差別の撤廃」「結社の自由・団体交渉権の承認」「安全で健康的な労働環境」の支持・尊重を含みます。

私たちは「人権の尊重は企業として果たすべき重要な社会的責任」であるとの認識のもと、事業活動のすべてにおいて、あらゆる人権侵害に直接的に関与しないだけでなく、社外の関係者を通じた間接的な加担もしないよう努めます。また、人権デューディリジェンスの仕組みを構築し、人権に対する負の影響およびそのリスクについて把握するとともに、その防止および軽減を図ります。この人権方針の実践については、当グループCEOが責任を持って行っています。 帝人グループでは、2018年6月に「行動規範」を「Together」「Environment, Safety & Health」「Integrity」「Joy at Work」「INnovation」という5項目に全面改訂し、「Integrity」の項目で、人権への取り組み姿勢を明示しました。

  • Integrity:私たちは、法令規則を遵守し、人権および地域コミュニティを尊重して、誠実に行動します。
  • すべての事業活動およびサプライチェーンにおいて人権を尊重し、差別やハラスメントなどを許容しません。また、説明責任を果たし、地域コミュニティから信頼される事業活動に努めます。
  • 事業を行う国、地域、および多国間の法令・規則を遵守し、また国際的な規範を尊重します。

2020年8月には、この「行動規範」を帝人グループ全体で共有するためCEOのビデオメッセージを作成し、帝人グループが展開する全地域・国の言語による字幕を付けて、全グループ会社に発信しました。また、2019年3月に帝人(株)取締役会において「帝人グループ人権方針」の制定を決議し、人権の尊重は企業として果たすべき重要な社会的責任であるとの認識のもと、事業活動の全てにおいて、あらゆる人権侵害に直接的に関与しないだけでなく、社外の関係者を通して間接的にも加担しないよう努めることを宣言しました。英国現代奴隷法については、「英国現代奴隷法に関する声明」をホームページ上に掲載しています。

人権デューディリジェンス

当グループのそれぞれの事業について人権に対するリスクを特定し理解するため、数年ごとに人権リスクアセスメントを実施しています。2018年度の第1回アセスメントに続き、2023年3月から12月に第2回アセスメントを実施しました。このアセスメントでは、各事業の定性情報から「地理的リスク」「製品別リスク」「雇用形態別リスク」「業界リスク」を評価して、それらの総計として各事業の「人権侵害リスク」を定量的に分析しました。2023年のアセスメントでは、2018年に続き繊維・製品事業が高リスクであると評価を受けたことに加え、アラミド事業の「製品別リスク」「業界リスク」が高まっていることを確認し、リスクごとに対応策を講じています。これまでの取り組みはアーカイブページをご覧ください。

調査対象

帝人グループ内の12事業*

  • *1. アラミド 2. 炭素繊維 3. 樹脂 4. コーポレートビジネスインキュベーション 5. 複合成形材料 6. 繊維・製品 
    7. 医薬 8. 在宅医療 9. IT 10. マテリアル新事業 11. ヘルスケア新事業 12.エンジニアリング

調査手法

調査対象の各12事業の定性情報から、「地理的リスク」、「製品別リスク」、「雇用形態別リスク」、「業界リスク」を評価して、それらの総計として各事業の「人権侵害リスク*」をスコア評点。

  • *本調査が対象とする「人権侵害リスク」の定義
  1. 1.本調査対象では「現代奴隷」に焦点を当てています。「現代奴隷」とはあらゆる人権侵害を指し、なかでも奴隷労働、強制労働、人身取引等を対象としています。
  2. 2.本調査では「現代奴隷」のリスクについて以下の要素から分析を行いました。
  • 過当競争により参入障壁が低い業界であって労働法が脆弱で集団交渉権の行使が有効でない法域かどうか
  • 未熟練労働者が多数を占めている業界かどうか
  • 女性労働者が多数を占めていないか
  • 児童労働の事例が確認されていないか
  • 外国人労働者が全労働力において高い割合を占めていないか
  • 人身売買の事例が確認されていないか
  • 劣悪な雇用慣行の事例が確認されていないか
  • 債務束縛の事例が確認されていないか
  • 操業地が不安定な地域、もしくは紛争地域かどうか
  • 全労働力における難民の割合が高いか
  • 非常に抑圧的な政権を持つ国における操業ではないか
  • いわゆる3K(きたない、危険、きつい)と呼ばれる作業、例えば、危険もしくは肉体的につらい手作業かどうか、繰り返しの動作が長時間続く作業、および蔑視されまたは社会的に過小評価されている作業などを行うために未熟練労働が使われる産業かどうか(これらの作業は、通常、搾取を非常に受けやすい季節労働者、マイノリティー、もしくは社会的に周縁化された人々によって行われていることが多いとされています)
  1. 3.本調査において「強制労働」とは以下のような特徴があることとしています。
  • 不当な賃金の天引きや減額
  • パスポート等の身分証明書の不当な没収
  • 債務による束縛(労役を担保とした債務保証の強要。51%以上の強制労働従事者は債務による束縛を受けていると言われています)
  • 残業の強制
  • 雇用主・リクルーターによるさまざまな強要(言葉や身体的、性的ないやがらせ)
  • 甚大な労働安全衛生上のリスクを発現させる、集中的・長時間・単純な繰り返しを強いる労働形態

調査結果

帝人グループ各事業の製品用途・製造態様の視点から見ると、移民労働者や地域リスクの高い地域で業務遂行されていることがわかりました。中でも「繊維・製品」、「アラミド」の人権リスクが高く、次いで「炭素繊維」、「ヘルスケア新事業」となりました。

繊維・製品事業 一般的に人権リスクが高い移民労働者を多く雇用するアパレル業界を含む
アラミド事業 製品が軍事用途に転用される危険がある
炭素繊維事業 人権問題のリスクを抱える国での工場操業がある
ヘルスケア新事業 食品の原材料供給サプライヤーでは労働安全衛生上のリスクが高い

これら人権侵害の潜在リスクが相対的に高いと特定された事業においては、すでに実施している人権侵害防止の措置も含め、人権侵害が発生していないかどうか点検を実施するとともに侵害防止のモニタリングを継続していきます。

人権デューディリジェンス活動まとめ

人権デューディリジェンスカバー率 人権課題が懸念される割合 人権課題に対して措置を講じた割合
2023年度 100% 31% 100%
考え方 2018年度以降、人権デューディリジェンスは帝人グループ全体を対象としています 人権課題が認められる縫製加工事業を担う繊維製品事業の売上が帝人グループ全体に占める割合 CSR調達アンケート等を通じて人権リスクを把握した取引先60社全社をモニタリングしています

2024年度の計画

2023年度から引き続き、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に沿った人権デューディリジェンスのしくみ構築を進めるとともに、以下の人権デューディリジェンスの方針のもと、外部有識者とのダイアログ結果を反映させた施策を実施します。

方針

  1. 1.環境も含めた観点から、帝人グループ全体での人権デューディリジェンスの取り組みを進めていく。
  2. 2.人権デューディリジェンスのターゲットを設定して取締役会を含めたコミットメントを行い、実践面での管理監督を実施していく。
  3. 3.人権デューディリジェンスの状況について、適宜情報開示を進めていく。

外部有識者との対話

ビジネスと人権の取り組みに関する国際的な潮流や基準に沿って人権尊重の取り組みを進めるため、国内外のトレンドに造詣の深い外部有識者である経済人コー円卓会議日本委員会とダイアログを定期的に開催しています。帝人グループの事業の状況と人権に与えるインパクトをリアルタイムに把握し、とるべき対応の方向性について議論を重ねています。

社員に向けた人権尊重の取り組み

社員への人権教育

帝人グループでは、人権尊重の意識を高めるため、毎年10月の「企業倫理月間」に全社員(契約社員や派遣社員を含む)を対象とした研修を各職場で実施しています。2022年度には、「人権の尊重」をテーマにケーススタディ動画を制作し、帝人グループが展開する全地域・国の言語による字幕を付けて、全グループ会社に発信しました。

相談・通報窓口に寄せられた声への対応と活用

帝人グループでは相談・通報窓口を設けて利用促進を図っています。2023年度は146件の相談・通報が寄せられ、そのうち人権に関わるものは43件(処遇上の不満、性別等を理由とする差別・セクハラ等)でした。全件の事実関係を調査し、具体的な事象が確認できたものについては、是正するための注意喚起・教育を実施するとともに、通報者への報復がなされていないかモニタリングを行っています。通報・相談窓口に寄せられた数々の声を、潜在するリスクの発見・分析に活用することで、現状に即した啓発活動を行い、人権尊重の大切さを全社員に浸透させていきます。

取引先に向けた人権尊重の取り組み

帝人グループでは、サプライチェーン全体で人権尊重を実践するために、「CSR調達ガイドライン」に「人権・労働」の項目を設け、取引先に人権尊重への取り組みを求めています。2017年度からは、持続可能な調達に関する国際規格「ISO20400」およびその他の国際的な基準を参照し、サプライチェーンにおける人権、労働などに関する下記項目について、詳細な取り組みを明記しています。

人権・労働項目
強制労働 児童労働および若年労働 外国人労働者 労働時間と休日
賃金と福利厚生 差別 ハラスメント 結社の自由

帝人グループでは、2023年度も主要な取引先にCSR調達アンケートを送付し、取引先の人権尊重の取り組みの状況を調査しています。人権に関する設問への回答に懸念があった会社に対しては、ヒアリングをして問題の有無を確認するようにしています。また、人権デューディリジェンスにおけるリスクアセスメントで、人権侵害リスクが相対的に高い事業として特定された「繊維・製品事業」においては、代表的なグループ会社である帝人フロンティア(株)が、現地の取引先における法令遵守と人権保護の徹底を目的とし、アジア地域及び国内の取引先に対して、セミナーの開催や実地訪問監査を継続的に実施しています。人権侵害リスクの高い事業については、第三者外部団体および有識者に確認の上、継続的に管理および啓発活動を実施していきます。

また、繊維・製品事業では、長年にわたり外国人技能実習制度を活用し、外国人技能実習生を採用してきましたが、社内調査により、技能実習生が自国で送出機関に多額の手数料を支払って来日していたことが判明したことから、技能実習生を受け入れる工場がその手数料を支払うことで、技能実習生の手数料負担をなくす「ゼロフィー・プロジェクト」を2019年度より開始しました。帝人フロンティア(株)の子会社で、技能実習生を受け入れている会社は、「外国人労働者に関する行動規範」を策定して監理団体に周知するとともに、2020年度からは送り出しに必要な手数料を、技能実習生を受け入れる帝人フロンティア(株)の子会社で負担しています。このゼロフィーを確保するため、送出機関における手数料の情報を開示してくれる監理団体から技能実習生を受け入れることにしています。また、技能実習生が手数料を支払っていないことは技能実習生に直接確認しています。さらに、取引先に対しても雇用する外国人技能実習生の処遇状況を定期的に調査しており、その調査対象となった取引先において労働基準法などの法律の重大な違反はないことを確認しています。

  • *技能実習生が来日前に自国の送り出し機関等に多額の手数料を支払うケースがあり、一部の国では実習生の所得の何年分にも相当する金額を支払っている実態がある。少しでも多く稼ぎたいという思いから、本人の希望による長時間労働や、帰国直前の失踪といった問題につながりやすく、社会的な問題となっている。

英国現代奴隷法に関する声明

2015年に英国で施行された英国現代奴隷法に基づき、声明を開示しています。