RFID棚管理システム
素材とICTの技術を融合させたスマートソリューション
近年、バーコードに代わる次世代の自動認識技術として、UHF帯ICタグの活用が多くの分野で急速に広がっています。UHF帯ICタグによる物品管理は、「高速に」「長距離で」「同時に」「複数を」認識できるというバーコードにはない特長がある一方、一定の領域に存在するICタグのみを正確に認識することが非常に困難でした。この課題のソリューションを提供すべく、東京大学篠田研究室および当該研究室から誕生したベンチャー、セルクロス社の独創的研究成果である二次元通信技術をベースにテイジンが独自に開発を重ね、商業的な利用まで発展させた素材とICTの融合技術が「レコピック®」です。「レコピック®」は、様々な物品に取り付けられた次世代バーコードといわれるUHF帯ICタグの情報を読み取ることのできる物品管理システムです。棚や壁や床などの平面に特殊なアンテナシートをとりつけ、シートに近接させた物品の所在を判別します。

二次元通信シートと独自アルゴリズム
「レコピック®」の特徴は面状に電波を局在化できる二次元通信シートと、読み取ったICタグの情報を的確にフィルタリングする独自アルゴリズムにあります。二次元通信シートは電波の伝搬特性を考慮した電波損失の少ない材料を選定し、限られた加工成形性の制約の中で量産可能な工法を開発しました。低誘電率素材で形成された誘電層を、一定以下の直流抵抗値の導電性素材で挟んだ三層構造で、一方の導電層は伝搬させる電波の周波数に対して最適化されたメッシュ形状の開口部を有しています。開口部から出た電波はシート表面にのみ強く伝搬し、シートに近接した物品のみを正確に読み取ることを可能にしています。また、読み取られたICタグのデータは用途に応じて適切なフィルタリングを行います。これにより、所在管理や使用回数の可視化し、これまで人を介さざるを得なかったためにどうしても発生してしまっていたヒューマンエラーや管理コスト削減を可能にします。さらにはデータ解析によってこれまで見えなかった無駄を顕在化させ、業務改善のヒントを得ることができます。
シート断面図(シート内の電波伝送イメージ)

二次元通信シートの構造

二次元通信技術の展望
あらゆるものがインターネットにつながるIoT社会に移行すると、現在よりも桁違いに多くの機器やセンサが身の回りで機能することが求められます。現在は無線通信を主体とした商品開発が先行していますが、信号の届く範囲が目に見えないため、通信範囲が不明瞭で認識しづらく、信号の到達範囲の制御も困難です。二次元通信は電波を局在化させ利用できるため、一次元(配線)通信のような煩わしさがなく、三次元(無線)の通信のような扱いづらさがない、有線と無線の長所を併せ持ち欠点を補完できるユニークな技術です。将来的には物品管理のみならず、生体センシングやワイヤレス給電など様々な分野での活用できる可能性を秘めています。
通信エリア限定 | 混信・干渉 | 自由配置 | 簡単接続 | |
---|---|---|---|---|
一次元通信 (ケーブル) |
◎ 有線接続した 機器のみに限定できる |
◎ 通信は ケーブル内のみで完結 |
× 配線がないと 通信不可能 |
× ケーブルを 挿す必要あり |
二次元通信 (シート) |
◎ シート面近傍の 機器のみに限定できる |
◎ 通信は シート面内のみで完結 |
○ シート面近傍ならば 自由に通信可能 |
◎ 無線で接続可能 |
三次元通信 (無線) |
×~△ 電波が届く範囲の 限定は困難 |
× アクセスポイント 同士の干渉あり (通信速度ダウン) |
◎ 無線信号の届く範囲であれば自由に通信可能 |
◎ 無線で接続可能 |
「レコピック®」の用途展開

2012年より図書館の書籍管理向けに本格的に販売を開始し、貸し出しのない館内利用状況の可視化や、貸し出し手続の簡素化と混雑の解消に寄与、以後着実に各地で採用実績を重ねています。2015年からは病院内の医療機器管理向けに導入が広がり、医療機器の在庫状況や使用履歴把握によるメンテナンス時期の最適化、購入台数の削減、管理に係る人的負担の低減等に貢献しています。
2018年には工場内での工程管理にも活用されるようになり、インダストリー4.0の一翼を担っています。更に、小売り用途での個品管理へ発展し、デジタルマーケティングや少子高齢化による省人化などの社会的ニーズに応えていくことが期待されます。