イノベーション

超極細ポリエステルナノファイバー

ナノサイズ繊維で暮らしを進化

テイジンは、21世紀はじめよりナノファイバーの開発を進め、量産化技術の開発や用途開拓に取り組んできました。そして、2008年より世界で初めて、長繊維で、直径700nmの均一な単糸径を特徴とする、高強度ポリエステル長繊維ナノファイバー「ナノフロント®」の商業生産を開始することに成功しました。
「ナノフロント®」は、その極限の細さから「滑りにくい」、「肌にやさしい」、「拭き取りやすい」、「光を透しにくい」などの多様で新しい機能を有し、これらの機能を活かした商品を衣料用から産業用まで幅広い用途で展開しています。

「ナノフロント®」を用いた各種商品開発・技術開発の特徴

1.ポリマー設計と精密複合ポリマー製糸技術

繊維をより細く高強度化するために、従来の海島断面コンジュゲート紡糸技術を高度化し、独自の新規口金設計により、繊維1本内の島の数を従来のマイクロファイバーの50~100倍となる数百~千本とした超多島海島断面原糸を作製し、それを高倍率および繊維構造形成を促す張力下で延伸を行いました。さらに、加水分解速度が、島成分のポリエステル対比1000倍以上となる海成分用改質ポリエステルをポリマー設計し、環境負荷の少ない水系溶剤処理で完全溶解除去することが可能となりました。
近年、これらの技術をベースに、通常のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)以外のポリマーを使ったナノファイバーや、直径700nmよりもさらに細いナノファイバーの開発も行っています。

2.構造体設計技術および加工技術

上記のポリマー技術と精密製糸技術をベースに、海成分と島成分を均一に水系加工剤で溶解分離する加工技術と、独自の糸加工技術やテキスタイルや不織布などの構造体形成技術を確立しました。
ナノファイバーが多数、高密度に集まった2次元あるいは3次元構造体にすることで、「高表面積」、「吸着」、「分離」、「柔軟性」などの「ナノサイズ効果」が発現します。さらに、これらの効果を用途ごとのニーズに適用するために、独自の製品(商品)化技術を駆使することで、「滑りにくい」、「肌にやさしい」、「拭き取りやすい」、「透しにくい」などの多様な新しい機能を発揮することに成功しました。

海島割織技術

3.商品開発における機能検証訴求技術

「ナノサイズ効果」の具現展開例として、グリップ性・筋肉振動抑制など人間工学を基盤とする運動アシスト機能商品や、密着性・しなやかさを特徴とするコスメ・スキンケア用品などの生活雑貨、高表面積・超微細構造により近赤外線を効果的に反射する日傘をはじめとした遮熱商品、精密研磨布や高機能フィルターなどの高性能産業資材、など幅広い用途で最適ソリューションを提案しています。これらの商品を実用化する際には、消費科学などに基づいた新評価技術をも開発し、新たな価値の創出を行っています。

「ナノフロント®」の機能を活かした商品開発事例

1.滑りにくさの利用 - ゴルフグローブ

ナノサイズの繊維により、生地とグリップ、さらには生地と手のひらとの接地面積が広くなり、大きな摩擦抵抗を生み、それにより滑りにくいという機能が発現します。この「ナノフロント®」使用グローブ生地の表面構造は、ニホンヤモリやユリクビナハガムシなどの接着力の高い生物の脚先の構造と類似しており、これより摩擦抵抗力が大きいことが裏付けられています(バイオミメティクス)。
また、極限の細さがもたらすソフトな風合いと独特の貼り付くようなフィット性、汗や雨で濡れるとさらに摩擦抵抗力が高くなるなど、従来のグローブ用素材にはない特長をもっています。
2009年に初めてゴルフグローブの素材として採用されて以来、天然皮革、合成皮革でもない、第3の素材として注目され、多くの主要メーカーで採用されています。 この優れた滑り止め機能を活かし、各種スポーツ用や作業用のグローブの他、ソックスやサポーターなどにも用途は拡がっています。また、日常生活のアシスト素材としても機能を発揮します。

ニホンヤモリの脚先
「ナノフロント®」使用生地の表面

2.透しにくさの利用 - 遮熱日傘

光の波長(数百~数千nm)に匹敵する直径の繊維で構成された生地の表面積は通常の生地の数十倍になり、また、繊維間の空隙サイズはナノレベルの超微細構造になります。「ナノフロント®」を均一に積層・分散することによって、太陽光に含まれる近赤外線(熱線)を効果的に反射させることが可能になり、高い遮熱効果を有する日傘を商品化しました。従来技術の機能剤の後加工とは違い、繊維構造自体が持つ特性であるため、遮熱効果の耐久性は半永久的です。

頭上温度比較

3.分離性の利用 - 高性能フィルター

クリーンルームなどに使用されるフィルターは、「低圧損・長寿命」でかつ「高捕集」という矛盾する性能を有する省エネ型高機能フィルターの開発が望まれている。ナノファイバーを含む複数の繊維径を持つ繊維を組み合わせることにより、それらの矛盾する性能の両立が可能であることが判明しました。
また、現在この領域では、300nm程度のガラス繊維が多く使用されており、使用後の廃棄負荷の問題がある一方、「ナノフロント®」は焼却処分が可能であり、環境面でも評価されています。
これまでになかったフィルターとメンブレンのギャップ領域を埋めるフィルター素材として期待が大きく、設計自由度の高い素材として、液体処理フィルター、空気フィルター、医療機器フィルターなど開発を推進しています。
今後、顧客の用途・要求特性に応じてバリエーションの拡充を図ることで、さらなる用途開拓を推進していきます。