意志がなければ、未来に行けない。
どんな苦労があるのでしょうか。
今ではなく、未来がテーマだという点ですね。現場の高齢化対策、事故発生リスクや人的ミスの低減など、DXは数多くの課題解決に役立つ可能性があります。一方、少なくとも今のところ、DXがなくても現場はちゃんと動いている。だからこそ必然性を理解されにくいですし、私自身、変化を生み出すのだという強い意志を持って取り組まなければ進まないんです。
その苦労にまつわるエピソードを教えてください。
入社2年目の話です。私は以前から、設備担当はもっと現場に密着するべきではないかと考えていました。設備担当の基本的なミッションは、現場から上がってきた課題に対応することです。しかし、現場で何が起こっていて、何が本当に求められているのかを踏み込んで知ることもないまま、真の課題解決はできないと感じたんです。組織改編を機にそのことを進言しましたが、周りは「そこまでやる必要があるのか」という雰囲気でした。
では、提案は受け入れられなかったのでしょうか。
いえ、そこがテイジンらしさかもしれませんが、止められはしませんでした(笑)。私の提案が一部受け入れられ、私は担当工場に駐在して業務を行うことになりました。DX推進に不可欠なのは、理想を描くだけではなく、それを現場のリアルとすり合わせて具体的なイメージに落とし込むプロセスです。現場密着型の業務が実現したことで、それが可能になったと思います。
意志を持ってやろうとすれば、実現するのですね。
そもそもDX推進について、会社が決めたゴールはないんです。だから私自身が決めなければならないですし、決めさせてもらえるとも言えますね(笑)。テーマが大きいだけに苦労も絶えませんが、私が事例を生み出せば、それがやがては横展開されていく期待もあります。また、アラミド事業はオランダにも巨大な生産拠点を持っていて、そちらの状況も吸い上げながら将来を描いています。IT化とグローバル化という、2つの大きな変化の中で仕事できていることが、技術者としての私の未来にもつながってくれるとうれしいですね。